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おもちゃ部屋

これは、私が幼少期に体験した話です。  
確か、四、五歳位の時だったと思います。

小さい頃住んでいた祖父の家には、いつもおもちゃを使ったり、
置いたりしている。通称“おもちゃ部屋”がありました。  
私は妹で、一つ上の姉が居るのですが、兄妹揃ってその部屋が大好きで、
暇な時、おもちゃでおままごとをしたい時は、
いつもそこに二人で遊んでいたのを覚えています。
私は外遊びの方が好きだったので、
四日に一回ぐらいしか行ってなかったのかも知れませんが、
今でも家具の配置、何処にどんなおもちゃがあったのか、鮮明に覚えています。

祖父の家は広いのですが、そのほとんどが物置や倉庫のようになっていて、使えない部屋もあったため、
母、私、姉で寝られるスペースがあまり有りませんでした。
それでいつからか、いろんな部屋で寝てみて、
何処が寝室に良いか、布団を持って行ってみんなで寝たりしていました。
どの部屋も過ごしやすかったのですが、
子供心ながらに、もう少しいい所が良い、と思っていたため、
いろんな部屋を転々とし、寝られる部屋はほぼ全て試したと思います。

そして一番最後に、私たちが大好きだった“おもちゃ部屋”に寝てみよう!という事になりました。
おもちゃ部屋が大好きだった私と姉は大喜びで、
すぐにその部屋に寝る事になりました。
最初はウキウキで寝床に入って、明日は何をするか、
起きてすぐにおもちゃで遊ぶか、など、子供らしい会話をしながら、
疲れて寝てしまったそうです。

ここまでは、母から聞いた話と、覚えている話を繋ぎ合わせたのですが、
最初の一日目と二日目のことを全く覚えていないので、
今まで寝泊まりしたのは一日だけだと思っていました。  

それはさておき、今でも本当に鮮明に思い出せるのは、
二、三日ほど寝て、三日目の夜中からです。
夜中、ハッっと目が覚めて、本当に目が冴えてしまって、
怖くて、怖くて、何も見えない暗闇の中を、手探りでお母さんの布団まで移動して、
『怖いから、一緒に寝て?』 と、お母さんが起きるまでずっと言いつづけ、
「なぁに…」 と、いかにもねむそうな、
不機嫌そうな声で返事をするお母さんを真っ暗な暗闇の中で探して、
暖かい空気と声がする方に進んでいって、
抱きかかえられながら安心して眠りにつきました。

あぁ、これで朝まで大丈夫だ。って……
でも、朝起きると、一緒に寝ていたはずのお母さんが居なくて、
どうして居ないのか、顔だけ動かして探して、
姉が寝ている布団に移動してぐっすり寝ている母が居ました。
それを見て何故か苛立った私は、お母さんの布団から出て姉の布団まで行き、
姉と母の間に割って入り、ちょこんと正座して、
絵文字で書くと、まさにドヤァッ… って感じで、
いい気分になったのを覚えています。
そして さぁ、これからもう一眠りをしようと、
自分の足にかかっている毛布と手から、視線を動かした時、
部屋の左端を見た瞬間、人が立っているのがわかりました。

しかも、明らかにおかしいんです。
十二一重を着ていて、手をだらんと下にぶら下げていて、
長い長い髪の毛が少し乱れていました。
そして更に、頭に張り付いていたのが、 ちらりと見える素肌や手、顔が、ペンキを被ったように“血”で真っ赤なのに、
綺麗に重ねられた十二一重の布地や、少し乱れている髪の毛は、
全く赤く染まってもいませんし、シミ一つないんです、
そして何より怖かった、と言うよりおぞましかったのが、
ぽっかり空いた穴のような口と目、 顔全体が赤黒く、
その中にぽっかりと空いた黒くて、吸い込まれそうな位に黒い目と口。
しかも、目は丸く見開いたままこちらを見ているようで、
口はずっと あ…お……あ…… と、僅かにもごもごと動いている事…

一瞬で凍りついた私は、初めはただその亡霊のような十二一重の女の人を見ているだけだったのですが、
ススススーっと、足を全く動かさず、体も何処も1ミリも動かしていないのに等速直線運動で動き出して来た女の人を見た時、
ハッとして、やっと動かなきゃ!と思ったんです。
そして、お母さんが起きるまで、どこかに籠ろうと思い、
隣の襖を開けた先の物置に勢いよく滑り込み、
(これで追いかけてこない!) そう思ったのです。
が、 目の前の襖を、開けずにズァッッッとありえない速度ですり抜けて、
顔をこちらへ向けて、50センチ弱まで近ずいて来て.!.
瞬間、頭の中で何かがプチッと切れて、
今までにないぐらいの大声で
『ギャアアアアアアアアアアアァアアアアアアアアアッツ!!!!!!』 と叫び、
触れるか触れないかのギリギリで走り出し、
襖を開け放ち、アルミ製のドアを開けては閉め、走り、ドアを開けては閉めて走り、
長い長い廊下を駆け抜けて、コタツの有る部屋まで、恐怖と、不安と、得体の知れない存在から逃げて駆け込み、
視線を上げた時、先に起きていたらしい祖父と祖母が目をぱちくりさせながら
「どうした〇子や、今日は早いなぁ?」 と、話しかけてくれました。
ここから、ぷっつりと記憶が途絶えています。

多分、鮮明に、確実に覚えている記憶の中で、
一番古くて、小さい頃の思い出は、少々遺憾ではありますが、これだと思います。
他にも私は、恐怖体験というか、心霊体験が子供の頃は多かったそうで、 おもちゃ部屋で寝始めた一日目と二日目も、
変な夢を見た、 とか、 ドアを開けた先に般若がいる! などと言っていたそうです。
そして、先程書いた体験もあり、最速で寝る場所が変わったのです。
あとから聞いた話では、おもちゃ部屋件物置だったあの部屋は、
母が小さい頃牛小屋だったらしく、生き物を飼っていたから、淀んだものが寄ってきたのではないか、と。

祖父の家は大好きですが、私のこの体験談の他にも、
家族全員心霊体験があったり、夜は狸ぐらいしか寄り付かないので、
やっぱり、一人での留守番や、静寂に包まれる夜は、 どうしても怖いです。

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