障子戸の黒い影

 私が、高校生だった頃の実話です。

 当時、私は小学生から始めていた陸上競技を続けていました。
 ある大会の競技場が遠方の為、その大会は一泊の日程でした。
 今から話す不思議な体験をしたのは、その宿泊した宿での出来事です。

 宿には他校の人達も宿泊していましたので、客室が足りず私達4人の女子はその宿の仏間に通されました。
 多分宿と住まいが一緒だったのでしょう。 仏壇は扉が閉めてあり、その上には代々のご先祖様の遺影がありました。
 私達は、何だか嫌な気分でしたが、他の三人は時間が経つにつれ気にならなくなっていたようでした。
 ですが、私には案内され入室した時から、どうも仏壇の上にあるご先祖の遺影の一人の方が気になっていました。
 怖いとかではなく妙に気になり、どうしても目がいってしまうのです。
 その夜、仏壇を右側に四人布団を並べ就寝していました。
 仏間のある位置が、部屋の周りをコの字に廊下で、障子戸と主な出入口の襖戸。
 私達の寝ていた向き、頭側が障子戸になっていました。

 寝入ってからどのくらい経ったかは分かりませんが、私だけふと目が覚めたと同時に頭側の障子戸がスー、スーと動く音がしたので瞬間的に上体をそちらに向けました。
 その瞬間、1メートル程の高さの黒い影が、自分から見て右側に去っていきました。
 右側に去ったと言うことは、襖に向かう廊下の非常灯が緑色に点灯していたので、襖の細い隙間から誰かが通れば一瞬光が遮られるだろうと思い、そちらの隙間を見たのですが、変化がなく障子戸にもう一度目をやると50センチくらい開いていました。
 私は、もしかしたら男子がイタズラで開け、角で隠れているのではないかと思い、起き上がり障子戸から顔だけ出して「誰!?」と声を掛けたのですが、誰も居らず、開いた障子戸を閉め布団に戻り時計を見たら4時。
 そのまま再度眠りについてしまいましたが、朝になり考えても不思議でしかたがありませんでした。

 他の子には、怖がると思い打ち明けませんでした。
 もう何十年も前の事ですが、未だに忘れません。
 何か最初から気になっていた、遺影のご先祖様と関係があるのかな……? と思う以外ありません。
 ご先祖様が、遊びから帰ってきたのに私に気付かれ、とっさに姿を隠したのかな? などと解釈しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

閉じる