バスの乗客

 最近仕事で、大学生時代に住んでいた東京のある地域を訪ねることになり、ふと思い出した少し怖くて不思議な話。

 私は大学生当時、一人暮らしの家から大学まで自転車で通学しており、運動が好きというのもあり散歩の延長で夜中によく自転車で走ったりしてたんです。
 その夜も暇を持て余し、夜中に自転車で軽く放浪していた帰りにコンビニに寄りました。
 自転車を前に止めていて、買い物を済ませてコンビニから出て、鍵を外して自転車を傍に歩き出すかというタイミングで、目の前でバスが止まりました。
 そう、そのコンビニの入り口のすぐ前には停留所があるんです。
「いやいや俺乗客じゃないよ」くらいに思っていました。
 運転手さんが私が自転車に乗ることを知らずに乗客と勘違いして停車したんだ、くらいに思ってたのを覚えています。
 しかし運転手は私の方を見ずに車内後方を気にしていて、いかにも「降りないんですか?、出発しますよ?」みたいな感じで気にかけている様子なんですよね。
「なんだ降りる人がいたんじゃん」と思いましたが、すぐ異変に気づきました。
 バスの車内って外から見えづらくはなっているものの、まぁ夜だし電気付いてるじゃないですか。いくら座っている人がいたとしても頭くらいは見えますよね。
 でも、外から見ても車内には誰も乗ってないんですよ。
「いやいや何かの勘違いでしょ運転手さん」って当時も思いましたよ。
 でも流石に「次止まります」のボタンが押されてたのはどう解釈すればよかったのか。
「なんで誰もいない車内でボタンが押されてるの?てか運転手は何も変に思わないの?」と鳥肌が立ちました。
 私には霊感はありませんが、運転手には何か見えていて、その何かはしっかりボタン押してから下車しようとしてたってことでしょうか。

 と言った感じで、もう10年も前のこんな話を私の職場の同僚に話したんですね。
 というのもその同僚は東京のまさにその地域の出身で、昔私がその辺りに住んでいたと話が盛り上がったこともあり、実はあの辺で変な体験してさ、と話したんですね。
 そしたらその同僚が「〇〇さん、そのバスって××駅まで向かう線ですよね?、あの線ヤバいんだよ…」と私に言ってきたんです。 正直困惑しました。
 私は「止まるボタン押してから降りるとか律儀な幽霊もいたもんだ」とか、「運転手にはなんか見えたんだろうねー」くらいの笑い話のつもりでしたから。

 ここからはその同僚の話です。
 その同僚は当時高校3年生でバスケ部だったそうで、夜遅くの練習が日課で、夜によくその線のバスを使っていたそうです。
 同僚以外で人は乗っていない、または誰も降りないのに特定の停留所で勝手にランプがつく、満員なのに不思議と1人分だけのシートが空いている。
 こんな不思議なことをその線のバスでよく経験したといいます。
 彼女曰く、そのバス自体に憑いているのか、どこかから乗って来るのか、どのくらいの時間車内にいるのかもわからないが、“確実に”人間以外のモノが乗っているらしいです。
 良いモノか悪いモノかもわかりませんが、案外身近に共生しているのかもしれませんね、という不思議な話でした。
 あのとき運転手は何を見ていたのか、何を乗せていたのか、今でも気になります。
 ぜんぜん怖くないですが長々と失礼しました。

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