友人Oの体験談です。
Oは看護師として大きな病院で働いています。
あるときOの姉が、Oの働く病院で日帰りの手術をすることになりました。
O姉は結婚しており、2歳と0歳の子供がいました。
当日は姉の夫が子供の面倒を見つつ送り迎えもする手筈で、念の為夜勤明けのOもそのまま一緒に待つことにしました。
姉の手術中、公園に行きたいと駄々をこね始めた2歳の甥をOは病院の中庭に連れ出します。
この2歳になる甥はおしゃべりで、よく何かを指をさしては「〇〇してるね」「あれ〇〇じゃない?」と知らない人にも臆せず話しかけに行っていました。
当時の甥のお気に入りは真似っこ遊びでした。 保育園でよくやるらしく 「まねっこ、まねっこ、できるかな?」 と歌った大人の動作を真似をするのです。
本当は大人が歌って子供が真似するのですが、甥はそんなことは関係なく、周りの真似をするときにこの掛け声を使いました。
家でも外でも「まねっこ、まねっこ」と言っては近くの大人の真似します。 家族なら別に構いませんが、知らない人にも指をさして初めてしまうので、大人は少し気を張っていました。
待合室への帰り道、甥が建物の一角を指差して「まねっこ、まねっこ、できるかな」と歌い始めました。
Oは慌てて止めようとしましたが、周りには二人以外誰もいません。
鳥か猫かの動物でもいるのかと思ってキョロキョロ探していると、甥っ子は喉を上下にさすりながら「ゲーッゲーッ」と鳴き声を出します。
カエルでもいたかな? と考えましたが、甥の語彙だとカエルはゲコゲコです。
鳥は全部ピヨピヨでしたし、犬はワンワン、猫はニャーニャーかニャンニャンです。 Oは不思議に思って 「ゲコゲコじゃないの?」 と聞いてみました。
甥っ子はOよりも不思議そうな顔をして 「ゲーゲーって言ってるね」 そう返しました。
そしてまた同じ場所を指差して「えーんって泣いてるよ」 と言います。
そこまで聞いてOはハッとしました。
昨夜、救急車で病院に運ばれた患者さんが居ました。
初老男性で、嘔吐物を喉に詰まらせて倒れているという状況だったようです。 お酒を飲んでいる途中、トイレからなかなか戻らない男性を知人が不審に思い、発見に至ったようです。
ただ気がつくまで大分時間が経っていたようで、病院で死亡と判断されました。
甥が指差しているのは救急車が止まる搬送口の前です。 聞いたことのない鳥のような声、喉を掻きむしるような動作、泣き顔、まるで喉を詰まらせた男性の状況そのままです。
思わずゾッとして、まだ真似っこを続ける甥を抱き上げ待合室へ急ぎました。
幸いにも甥っ子は抱っこが楽しかったのか、すぐに真似っこ遊びをやめ楽しそうに歌い始めました。
Oは、甥は運ばれた男性のまねっこをしたんじゃないか、と言っていました。
ただ、病院に着いた時点でもう声をあげることもできなかったはずなのに、声まで真似できたのは不思議だとも語っていました。
