私に霊感なんてない

私には霊感など無い、と思い込んでいた。
両親共に気は小さいが鈍感で、そんな素振りもなかった。
幽霊を感じたり見たりした私には霊感など無い、と思い込んでいた。
幽霊を感じたり見たりしたことがないからこそ、小さな頃から心霊特集の番組や映画、怖い話などが大好きでよく見ていたものだ。

そんな私の隣で、母はビクビクしながら
「お母さんに霊感無くて良かった〜こんなのが見えちゃったら怖くて夜にお手洗いもいけないわ」と言っていた。

そんなわけで、私自身にもオカルト現象はひとごと…
さらには一生体験出来るものでもない、と変な自信を持っていたのだ。

幼い頃から不可解な体験をしていたにも関わらず…
あれは私が幼稚園児の時、雨の日の夜。
どしゃ降りでもないのに、真夜中にふと目が覚めた。

しとしとと雨音が聞こえて、私以外の家族は川の字に並んで眠っている。
それだけで心細かった。
目を閉じてなんとか眠ろうとする…が、私の耳には、普通ならばありえない音が聞こえてきたのだ。
それは小さく小さく…しかし、雨音に混じってはっきりと。

木琴の音だった。
しかも短いメロディを繰り返し繰り返し奏でている。
ぽん、ぽん、ぱん、ぱん、ぴん、ぴん、ぽん、ぽーん♪

音楽をやったことのある人は分かって頂けると思うが、短調の調べだった。
つまりマイナーコード…悲しげな暗いメロディ。
それを繰り返し繰り返し…
あまりに怖くなり、隣の母を揺すって起こした。

小声で「ねぇねぇ、お母さん…変な音が聞こえるよ…耳をすまして…」と。
母はむっくり起きて、寝ぼけたまま耳をすます。
「んー?何にも聞こえないじゃない」

小さな音だけど、その間私にはずっと聞こえているのだ。
あの不気味なメロディが。

「よく聞いて…ほら、木琴みたいな音だよ(泣きながら)」
「……やっぱり聞こえないよ?よしよし、Aちゃんも怖がりね。お母さんがぎゅってしてあげるから怖くないよ〜はい、おやすみ〜」

私が怖がりだったのは確かだ。
その時は母の布団にもぐり込み、母の腕の中で震えながら眠った。
けれど、その調べ…旋律は、大人になった今でも私の耳に焼きついている。

(もしこのお話が好評であれば、まだいくつかあります。)

朗読: 【怪談朗読】みちくさ-michikusa-

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