じいちゃんの夢

「あの、人形、あの人形を燃やしてくれ!お焚き上げしてきてくれ」

今はもう亡くなりましたが、おじいちゃんが最後に言ってた言葉です。
数年前から肺炎を患っており咳と息苦しさに苦しみながら私の達にうったえてました。

亡くなる1か月前、おじいちゃんは病院のベッドに横になりながら面会に来る私達に急にあることを言い出しました。
消えそうな、ほとんど聞こえないような声で、
「タンスの上にダンボールに入ったお雛様がある。それを、それをあの、人形を燃やしてくれ!
大谷の神社(地名なので伏せていただくと幸いです)が あるから、そこに持って行ってお焚き上げしてきてくれ」
これを私達が来てから何回も言うのです。

次の日もまた、次の日も、
私は不思議に思って
「なんでそんな事言うの?夢にでも出てきたの?」とおじいちゃんに問いかけました。
すると、おじいちゃんは私の目をじっと見て深く頷くのです。
どんな夢なのかはわかりませんが、 生前亭主関白で気難しいおじいちゃんが、
夢で怯えているのです、これにはおばぁちゃんもびっくりしていました。

その日帰って、家族でタンスの中を整理するとお雛様というより、おかっぱ頭の日本人形が3体出てきました。
これがおじいちゃんが言ってるお雛様なのかな?と一応3体の写真を撮り、ガラスケース越しに人形をじっくり観察してると、
妹が、 「この人形、髪伸びてね?」と、3体ある中の黄色の着物を着ている人形の横髪が1部、異様に長いのです。
これには父も驚いていて、人形にはなにか異様な雰囲気が漂っていました。

この人形はおじいちゃんが、私の母が産まれてから買ったものだと言います。
その週の父の休みの日父とおばぁちゃんと2人でおじいちゃんから指定された神社でお焚き上げをしてもらいました。
おじいちゃんにお見舞いに行くと、「ありがとう、ありがとう」と感謝をされました。

私達家族は宗教に入っています。
その宗教は亡くなる前に必ず女神様が迎えに来ると言われています。
おじいちゃんは亡くなる1週間くらい前から、
「昨日もトモマルヒメセンセイ(私達の宗教の女神様)を見た。美しかった。綺麗な人だった。」など言っており、
もうおじいちゃんと話せるのも最後か…と、、おじいちゃんのベッドの周りで家族で泣いていました。

おじいちゃんが亡くなったのはほんとにもう、すぐでした。
病院ではもうできることは何も無いと言われており、 お家で最後を迎えるという選択でした。
亡くなったおじいちゃんの顔はとても安らかでとても肺炎で苦しんだとは思えない顔つきでした。

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