もう、40年程昔の話です。
山間の小さな集落に住んでいた曾祖父の事。
集落で何でも屋的な存在で 祭りの指揮から習字の先生、お坊さんや神主の代理など、多岐に渡り器用にこなす人だったそうです。
二歳の私はとある事情でそこに預けられていました。 かなり溺愛されていたらしく常に行動を共にしていたそうです。
高齢の為病気に罹り、寝たきりになりましたが、ある天気の良い日、すくと布団から立ち上がり、障子をあけ 「ええ天気じゃ、ほな行こか」 と、言い布団に入り息を引き取りました。
当時は自宅葬、 慌ただしく人が行き来し、親族が集まりました。
私は生まれて初めての通夜、きらびやかな祭壇、線香の香り、沢山の花、人が集まる事に興奮していたそうです。
県外からも親族が集まりはじめ、おじ(曾祖父の孫)が帰って来た時 突然に、私が祭壇のお鈴(りん)をチーンと鳴らし、おじを見つめながら 「(あき)よ、もんたんか」 ※(あき(おじの愛称)よ、かえってきたのか) と、曾祖父の声でしゃべったのだそうです。
おじと私は初対面。
しゃべり始めた当時の私の口から おじいさんの声が聞こえた事に、親戚中が騒然となったそうです。
その後特に霊感があるとか不思議な体験をした等はないのですが、今でも身内で葬儀がある度、当時の話が話題にのぼり、なんとも言えない期待を含んだ視線を向けられています。