子どもの頃、ぼくはオバケが大の苦手でした。
天井の木目が人の顔に見えたり、風の音が悲鳴に聞こえたりして
夜は、しょっちゅう布団を被って震えていました。
うっかりホラー番組を観てしまうと
自分の身にも同じことが起こるんじゃないかと
想像力が制御できなくなり、怖くて怖くて仕方なかったのを覚えています。
ある日、そんな重度の怖がりについて、母に相談しました。
母は、呆れるでも笑うでもなく
とてもさっぱりした顔で、ぼくに言いました。
「でもあんた、見たことないでしょう?
見たことないなら、これからも大丈夫よ」
その言葉が妙に腑に落ち、それからは不思議と
極度の怖がりが治っていきました。
それどころか今は、ホラー作品を娯楽として楽しめるまでになっています。
母は霊感がありません。
ただ、占い師の家系だという母の知り合い曰く
「あなたは生命力(オーラ)が強すぎて、未来が見えない」
のだそうです。