きっと錯覚

これはきっと光の錯覚なんだ。

そう、光の屈折。でないと私は一体何を見たというんだ。

事が起きたのはとある車道、私は運転をしていた。助手席には母がいた。

夕食の時間帯かつ帰宅ラッシュ時だったので、ただでさえ車の量が多い国道は、道の両側の飲食店への出入りや信号機でひっかかっていたりと渋滞もいいところであった。

特に買い物などの用があるわけではなかった為、私は急ぎもせず運転をしていた。

ふと信号で立ち止まっていると、その手前にある店から車が出てきた。

別に急いでるわけでも無いし、まあいいやと思ってその車を自分の車の前に入れてあげることにしたんだ。

その車がおかしかった。

いや、車がおかしいということでは無い。

正確には車の中の人がおかしかったんだ。

道に入れるかどうかと思案しているであろうその車の運転手、その首から上が綺麗さっぱり無くなっていたのだ。

首が無いっていうと妖精?のデュラハンとか思い出すんだけど、割とあれに近いんだと思う。もしくはそういった妖怪。

ちょっとだけ見えた服装部分から女だと思った。

ただ、後部座席から見えた子供は普通に首から上があった。正直運転手に驚いていて後ろの子供が突然現れたようにも見えてそれもそれで仰天だった。

理解するのに時間を要したせいもあって一瞬硬直した。

母に聞いてみようかとも思ったが、母は母で何食わぬ顔をしている。

信号が青になると、その車は私の車の前へ入り、そのまま去って行った。

別に車ごと消えるとかそういうわけでもなく、ただ走り去っていった。

錯覚だったんだと思う、が、何も考えないようにして無理矢理帰った。

あれは錯覚だったんだと信じたい。

朗読: 朗読やちか
朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

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