リヴァイアサン

最初は、サメだと思った。

俺は、長距離貨物船の船員だったが、それは、カナダに向かっている最中の事だった。

明日には、目的のカナダの港に入港する予定だった。

 

俺は、休憩時間でやる事もなく、ただ海を眺めていた。

沢山の背びれが大海原に見える。

最初は、サメの群れかな?

と思った。

 

しかし、それにしては、一列に背びれが並びすぎていた。

やがて、その背びれは、こちらの方に向かって来た。

良く見ると、それは、サメの群れではなく、1匹の何かだと分かった。

 

大きすぎる……

 

俺は、急に恐くなり、ブリッジに手を振って、船長がそんな俺に気が付いた様子なので、その背びれを指さした。

船長は、ブリッジから双眼鏡で確認したようだった。

すぐに船は、面舵を取って衝突を回避しようとする。

しかし、間に合わず……

「ぶつかる!」

と、思った瞬間、そいつは、船体の下に潜った。

 

巨大だった。

長さは、100メートル位、胴の幅は、5メートル位あっただろうか?

急に空が曇り、雷鳴がとどろき始めた。

 

まるでそいつが雷雲を呼んだかのように……

そいつが、海面から頭を起こして正体を現した。

 

それは、龍だった。

俺は、腰を抜かして、その場にへたり込む。

龍は、雷鳴と共に海から宙に飛出し舞い上がった。

 

船は、そいつが起こした波に激しく揺れる。

そして、その龍は、宙を踊るように舞いながら上昇し、雲の中に消えていった。

 

この海域では、シーサーペントとして名高いキャディの目撃例が多い。

シーサーペントの正体は、多くの肯定派の識者やマニアの間で、蛇とかウナギとかと言われているが、それは、間違っている。

この事は、多くの船員が目撃したが、船長からは口止めされた。

しかし、俺は、誰も信じてはくれないだろうが、ここに記す。

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