大広間

私が高校生の夏の事です。

 バイトで、とある温泉地の小さめのホテルでバイトしていた時の話です。
 チェックアウト時間も過ぎ、オーナーご夫婦・社員さん・他のバイトの子、全員合わせても10人くらいでお昼を食べ、前々から社員さんが貸してくれると言ってた、某バンドのレーザーディスクを大広間のカラオケの機械で見る予定でした。

 オーナーの奥さんが「布団敷いてお昼寝してもイイよ」と、言ってくれたので、レーザーディスクを見ながら横になっているうちに、寝てしまっていました。
 寝てどれくらい経ったか判りませんが、ふと目を覚ますと体が全く動かない。

 その時、あたしが寝ている布団の周りを、ペタペタと裸足で何周もする足音と、耳の中に歯医者があるような機械が回転するような音が聞こえていました。
 私は初めての金縛りなのに「これが金縛りか」と思い、放っておいて再度寝ました。

 次に目を覚ますと、布団の周りの足音は凄く速くなっていて、耳の中の歯医者音も聞こえる。
 前と違ったのは、あたしの足元から2~3メートルくらい離れた場所に、白い着物を着た女性が、あたしに左半身を向ける方向に向かって正座していました。

 さすがに怖くなり、仲良しの社員さんの名前を大声で呼びました。
 少し待ちましたが、社員さんも来ないし、心霊番組で「自分は声を出してるつもりでも、実際には声は出てない」と言っていた記憶があったので、 「やっぱり、聞こえないんだな」と思い、また寝ました。
 すぐ、社員さんにその話をしましたが、やっぱり聞こえていなかったと云う事でした。
 ただ一つ解ったのは、【あたしは金縛りに遭っていながらも寝る】と云う事でした。

朗読: 小麦。の朗読ちゃんねる

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