実話伝承・広島の八岐大蛇伝説

私の育った町の北側には、極楽寺山という山があります。

登るのに1時間半で手頃という事もあり頂上にある極楽寺の年1回の祭の日以外でも、
小学生時代には良く友達と登って遊んでいました。

手頃と言っても最初の3分の2はハイキング気分で登れるのですが
残りはほとんど崖のような急斜面になるので冬でも登れば汗びっしょりになる様なコースでした。

頂上の極楽寺は古い歴史あるお寺で、祭の時にだけ公開される国宝の木造千手観音もありました。

海を挟んで南側には宮島があり、隣の山で通称のうが高原には巨石巨柱遺跡もあり、
この近辺には由緒ある神社仏閣も点在しています。

噂では、宮島の弥山からこの極楽寺を結んだ先には日本ピラミッドとして有名な
庄原の葦嶽山(あしたけやま)とその山間の巨柱遺跡に当たるとか……
この極楽寺の側にも古い伝承がある蛇の池(じゃのいけ)がありました。

その伝承というのはこんな話です。 昔、その池には8つの頭を持つ大蛇がいて、
春にはズルズルと地響きを立てて北に行き、秋にはまたズルズルと地響きを伴って越冬に帰って来るという様な……

この伝承は兄が夏休みの宿題で地元の老人や町の図書館の民族資料を調べて見つけましたから、
もう今では知る者も少ない事でしょう。

ある日、いつものように極楽寺山に登り、寺の脇を抜けて蛇の池へ行って遊びました。

当時はまだ娯楽施設が建っておらず、池の側にはすごく急で異常に長い滑り台があって、
私は友達とそれを何度も滑って遊びました。

それにも飽きてきた頃、池のほとりに行ってみました。

夏から秋にかけては、その名の如く蛇が多数生息していて、
特に秋はマムシが危ないので近づかないようにしていたのですが、
その日は初冬という事もあり、みんなで眺めていました。

「あれ、何?」 友達が何かを見つけて指をさしました。

そこには1匹の蛇が泳いでいました。

ただ…… その蛇には頭が8つあったのです。

あれは数世紀ぶりに産まれた八岐大蛇だったのでしょうか?

新しく建った娯楽施設に何もない事を祈っています。

朗読: 繭狐の怖い話部屋

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