お墓参りで

先日「ハワイの思い出」を投稿させていただきました、百合子です。

もう一つ、怖い体験を思い出しましたので、連続で投稿させていただきます。

 

私が小学校中学年の頃。

祖母、母、私の三人で、お盆に近くの墓参りに行ったときのことです。

 

祖母はご住職さんとお話をしており、母は掃除道具や桶を借りに行っていました。

好奇心旺盛な私はといえば、整然と並ぶ墓石の間を歩き回っていました。

昼間であったことや、近くに祖母も母もいたので、不安は全くありませんでした。

 

積石をペタペタと触ってみたり、大木を触ってみたり。

かなり失礼な行動をしていました。

 

そんな事をしていたからバチが当たったのか、私は石か何かに躓いて、転んでしまいました。

顔を打ったりはしませんでしたが、お腹を地面に打ち付けたらしく、痛みですぐに起き上がれませんでした。

痛みには強かったので、ぐっと堪え、両手を地面に着いて顔を上げました。

 

すると、十メートルくらい先だったでしょうか。

その墓場には、130センチくらいと背の低い石垣があり、その奥には竹林が広がっています。

その石垣の向こう側に、男が立っていました。

 

真っ黒な服を着た男。

黒い帽子、黒いネクタイとスーツ姿。 喪服の様な服装でした。

身長は、多分170センチくらいだったと思います。

年齢は、そこまで老いている様にはみえませんでした。

30から45歳くらい。

顔は帽子の陰で見えませんでした。

 

しかし、その男は、こちらを、じーーーっ、と見ているというのはわかりました。

薄気味悪い人。

直感的に、なんだかすごく、怖い感じがしました。

 

表情は見えませんでしたが、笑っている、と思いました。

逃げようと体を起こそうとしましたが、上から押さえつけられる様な金縛りで、起き上がることが出来ませんでした。

どうしよう、どうしよう、と、 私の頭はパニック状態でした。

 

石垣から覗くその男は、近づいてくるわけでもなく、話しかけてくるでもなく、

ただそこからじっとこちらを見てくるのですが、私は、心臓をバクバクさせながら、半泣きでした。

怖くて怖くて、上擦った声で母を呼ぼうとすると、不意に、視界が真っ暗になりました。

意識がなくなったわけではありません。

はっきりとした意識がありました。

 

そして、電気が消えたような暗さではなく、両手で視界を覆われたような感じでした。

温かさも冷たさもない、すごく不思議な温度の手でした。

驚きましたが、恐怖を覚える前に、視界は晴れました。

石垣の向こうに、男の姿はありませんでした。

金縛りも消えていました。

 

遠くで母と祖母の声がし、我に返った私は、脱兎の如く、家族の元へ向かおうとしました。

そこで、気付きました。

私が転んだのは、大きな仏像様(観音様?)と、その左右にお地蔵様がズラリと並んだ石段の前だったのです。

石で出来たその仏像様は、手を合わせながら、私を見下ろしている様に思いました。

お墓で遊んでいたから、怒っているのかもしれない。

 

私は、すぐに手を合わせ、「ごめんなさい!」と言い、家族の元へ走って行きました。

家族にこのことは言っていません。

 

信じる信じないにしろ、墓場で遊んだ事が知られたら、叱られるからです。

あの男が何だったのか、視界を隠した両手は何だったのかは、分かりません。

 

墓場で探検ごっこの様な事をしている私を懲らしめるために、

仏像様があの男を見せたのだろうと、個人的にはそう考えています。

 

それ以来、反省した私は墓場で遊ぶ様な事をやめ、そこで眠る人たちに敬意を払う様にしています。

あの黒い服の男を見たのも、それ一回キリです。

もう二度と、出くわしたくはありません。

朗読: 繭狐の怖い話部屋

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