ノリコ

 これは私自身が体験した話です。

 私は今2階建ての計4世帯が住めるアパートに一人暮らしをしています。階段を上がって目の前の部屋に住んでます。
 その日は仕事が夜勤だったんですが、職場に提出する書類を忘れてきたことに気付きました。
 幸い翌朝に出勤する上司に渡せばいいので、夜勤の休憩中に取りに帰ることにしました。

 深夜3時を過ぎたころ休憩に入れたので急いで自分のアパートに戻ってきました。
 部屋に入り机の上に置いてある書類を手に取って玄関に向かおうとした時、カツーンカツーンと、階段を上ってくる足音が聞こえます。
 すぐに嫌な予感がしました。
 2階はもう一部屋が空室、私しか住んでいないのです。
 私を訪ねてくるにしても、時刻は夜中の3時過ぎ。いろいろ考えてるうちに、足音はもう部屋のすぐ前まで来ていました。
 恐怖を抑えて、覗き穴から外を見ました。
 思わず声が出そうになり、手で口を覆って必死にこらえました。

 外には女性が立っていました。
 髪はバサバサで下を向いてるので顔はよく見えませんでした。
 何分くらい経ったかわかりませんが、玄関の扉を挟んで、その女としばらく対峙してました。
 覗き穴を覗いたまま動けずにいると、微かに女がなにかブツブツ言ってるのに気付きました。

「ノリコさん、もう許してよ、中に入れて」

 聞き取れたのはこれぐらいで、他にも何か言ってました。
 そのうち、階段を降りていき女はいなくなりました。時間にすると5分くらいでしたがとても長く感じました。
 女がいなくなった後も 恐すぎて玄関を開けれません。
 一人では職場に戻る勇気がなかったので、後輩の男の子に連絡してむかえに来てもらいました。
 来てもらった時にアパートの周りを確認してもらいましたが、
その女はどこにもいなかったそうです。

 あれは何だったんでしょうか?  幽霊? 人間?
 どっちにしても恐すぎる体験でした。
 それからは夜寝てる時も、またあの女が来るんじゃないかと不安で仕方ありません。近々、引っ越す予定です。

 ちなみに私の名前は、ノリコではありません。

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