ラブホテル

知らなければ、全て無かった事。

知ってしまったが最期、それはいつまでも追いかけてくる…。

今からおよそ10年ぐらい前のお話。

私は当時高校生だったにも関わらず、毎日毎日遊びほうけていました。

学校が終わると一応部活へ行き、部活が終わると夜のバイトへ。

てな感じの日々を送っておりまして、付き合っていた彼女と逢うのは、
いつもバイトが終わってからの夜中からか、週末だけに限られていました。

彼女も私も当時は実家住まい。

その為なかなか自宅ではエッチがしにくい環境下にあり、
彼女には様々な嘘をつかせては、親に内緒でホテル通いをしてました。

皆様もご存知かとは思いますが、週末のホテルはどこも満室になるのが早く、
空いてたとしても高額な部屋しか空きがない為、主にホテルへ泊まる際は平日の夜をよく利用しておりました。

平日の夜のホテル街は週末のそれとは異なり、カップルというか、寧ろ親子のような年齢差の方々が見受けられます。

いわゆる風俗の方達ですね。

特徴的なのは女性が皆、鞄以外に小さな紙袋をひとつ、別にさげている点です。

あの紙袋には商売道具がセットで入っていると知り合いの風嬢から聞きました。

そんな日々の中、 事件は起こったのです。

いつもの様に平日の夜にホテルへ泊まっていた訳ですから、
翌日学校がある為に朝早くからホテルを出発します。

何故かこのあたりは真面目でした。

いつも通りフロントへ電話して、ホテルを出発。

その日は時間もまだ早めでしたので、彼女と二人朝食をとってから学校へ向かおうという事になり、
近くの早くから開いている喫茶店でモーニングセットを食べていた時の事です。

私の座席後では、店内のテレビで朝のニュースが流れています。

二人向かい合わせで食事をしていると、彼女の動きが完全に止まり、
私の後方へと視線が釘付けになったまま硬直してました。

なに事かと思い、彼女の視線の先を辿り、テレビを見た私も愕然としました。

テレビのニュースでは、先程まで私達の居たホテルが実名で報じられているところでした。

ニュースの内容によると、今朝方ホテルの従業員の通報により、
室内から女性の変死体が発見されたというもの。

詳しい内容として、その後番組の中で特集が組まれて、事件のあらましが語られていました。

詳しい事件の内容ですが……事件は昨夜、連れが後から来るからとまず男性がひとりで来店し、
その後発見された女性が入室したそうだ。

恐らくヘルスを呼んだらしく、どうやら発見された女性はヘルス嬢のようだった。

ここまでなら、客と嬢が揉めた揚句に客が嬢を殺したという忌まわしいが通常の殺人事件なのだが、この事件は違った……。

まず女性の遺体が発見されたのが翌朝で、連れの男性客は既に部屋に姿はなく、
従業員の話では女性が入室後、二時間程で退室されチェックアウトしたとの事。

場所の特性上過度なチェックはされず、女性も一緒に退室されたものと思われたらしい。

その後、従業員が清掃の為、部屋へ入った際には誰もおらず、
いつも通りチェックを済ませ、次の客の為に部屋を準備したとの事だった。

通常通り部屋を空室表示に変えた直後、一組の若いカップルを部屋へ通し、
その際も何事もなく、その若いカップルは今朝方チェックアウトしたそうだ。

が、しかし…その後またいつも通り、清掃とチェックを済ませ、
次に入った親子程も年の差があるカップルからフロントへ連絡が入ったらしい。

『部屋に誰かいる…』と 従業員が急ぎ部屋へ向かうと、
そこには入口近くで男性が全裸で立ち竦み、ベッドの布団とマットレスが剥がされた先に、
連れの女性が気でも狂ったかのように、全裸で座り込み一点を指差し泣きじゃくっていたという。

女性が指差した先には、ベッドの木枠の中に無理矢理捩り入れられた女性の死体があったそうだ…。

事件の流れとしては まず、男性客が一人で入室。

ヘルス嬢を呼び、殺害のうえベッドのマットレスを剥がし、
木枠内へ遺体を遺棄し、マットレスを戻して逃亡。

その後何も知らない従業員は、一組の客を同室へ案内。

その客も何も気付かぬまま退室。

また新たに一組の客を案内したところ、
異変を感じた女性客が遺体を発見したということだ。

少なくとも一組のカップルは、
女性の遺体の上で愛を語らい、行為に及んでいた事となる…。

発見した女性は、普段から霊感が強いと人に自慢していたらしい。

一方、何も知らず遺体の上で、行為に及んでしまっていたカップルは、
霊感がまったく無かったという事になる…。

霊感が強かった為に遺体を発見してしまった女性。

霊感が無かった為に死体を見る事もなく過ごした二人。

果たして…どちらがよかったのでしょうか?
遺体を見た女性は、一生その光景が頭から離れないでしょうね。

知らぬが仏…という言葉通り、何も知らないほうが幸せなのかも知れませんね…。

知ってしまった私達にとっては、トラウマ以外の何物でもありませんが…。

このホテルは現在でも 通常通り営業しています。

あなたはそれでも、霊感持ちたいですか? それとも、持ちたくないですか?

 

第一章【HOTEL】 いかがでしたでしょう?
拙い文章に最期まで お付き合い頂きありがとうございました。

また… 続きとして私の学生時代の話を書きたいと思います。

聡明な読者の方は …もうお分かりでしょう b(・∀・)
殺害後、遺体が発見される間に入室したひと組の若いカップル…

そう… (;・∀・;)私たちです。

朗読: かすみ みたまの現世幻談チャンネル

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