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ジングルベル

これは私が大学生の頃にバイトしていた

とあるデパートの屋上にある、レストランでの出来事です。

確かあれは6月〜7月頃で

そのレストランでのバイトを始めてから数ヶ月が経ち

徐々に仕事にも、慣れて来た頃でした。

夜のシフトに入っていた私は、最後のお客様を見送り

看板を「CLOSE」に変え、パントリーという

お客様のいるフロアと、厨房の間にある

主にウェイトレスが飲み物や食器の準備をする場所で

洗浄後のフォークやナイフを磨いていました。

その店は、デパートのレストラン街の中でも

比較的小さいお店だったため、その日のシフトは最終的に

バイトの私と、コックを兼任している店長の2人だけになっており

店長が少し離れた階にある集積所まで、ゴミ捨てに出ていたため

店内には私だけが残されていました。

1人で黙々とフォークやナイフを磨いていると、斜め後方

パントリーとキッチンの間の辺りから

突然、「ふんふんふんふんふーん♪」と

女の人がハミングした感じの声で、ジングルベルが聞こえて来たんです。

店内には小さめのボリュームで、常時音楽が流れているので

一瞬それかな?と思ったのですが

歌声でなく鼻歌(ハミング)なのも変だし

初夏に「ジングルベル」が流れるのもおかしいと思い

その歌声が聞こえた方を振り返ったのですが

誰もいませんでした。

でも、その間もずっと

女の人の楽しげな鼻歌は聞こえて来るんです。

誰もいない、何もない ただの空間から

楽しげな歌声だけが、流れて来るんです。

驚きで、数秒間固まっていたのですが

何かがおかしい!と気付くと同時に

鳥肌がゾワワワっとたち、すぐに明るいフロアの方へ移動しました。

フロアに移動すると、レストラン街中にかかっている音楽が

より大きく聞こえてきたのですが

もちろん「ジングルベル」ではありません。

何が何だか分からず、かといってパントリーに戻るのも怖かったので

フロアで店長が戻ってくるのを待ち、起った出来事を伝えると

あまり驚いた様子もなく「ああ、見ちゃったのか」と、言われました。

店長曰く、そのレストラン街の女子トイレで

数年前に女性の首つり自殺があったそうなのです。

私は地元の人間なので、そんな事件があったのなら

騒ぎになって知っていてもおかしくないはず、と訪ねた所

某デパート(都心にも何店舗も出店している大手)では

イメージと集客に影響が出ないように

最小限の報道しかしない様、新聞やマスコミなどに働きかけていて

デパートの従業員以外で、そういった事故を知っている人は少ないとの事でした。

その自殺以降、その女性はレストラン街のあちこちの店で目撃されるようになり

霊感の強い従業員達は度々

閉店後の店内で、端の方の席にうつむいて座っている女性の姿や

ガラス張りの窓の向こうから、じっとこちらを見ている青白い顔の女性の姿を

見かける事があるらしく、昔からの従業員の間では周知の事実になっていた様です。

「鼻歌を聞いた」という話は、それまで聞いた事がなかった様なのですが

店長は「曲名を聞いて、すぐにその女性の霊だとわかった」と。

その女性が首つり自殺をしたのは、12月24日のクリスマス・イブだったそうです。

それ以降、夜のシフトに入る時は

1人でパントリーにいる事を控えたため、同じ様な事は起こりませんでしたが

10年以上経った今でも、あの楽しそうな「ジングルベル」が耳にこびりついて離れません。

朗読: 【怪談朗読】みちくさ-michikusa-
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