正露丸の20倍

最初に言います。

拍子抜けするかもしれませんが、このお話には悪霊も狂人も出てきません。あしからず。

ただ僕と友達の実体験であり、その場所へ近づこうとするのであれば誰しもが経験するであろう事は保証します。

 

最初にそのニュースを聞いたのは今年の春の事でした。

「違法民泊バラバラ殺人死体遺棄事件」

と聞けば大筋を把握してらっしゃる方もいるのではないでしょうか

 

僕は家の近所で起きた事件だとは認識していましたが、どこか遠い世界の出来事の様に感じていました。なにぶん治安の良い町なもので。

 

ただ今年の夏に何気なく大島てるとグーグルマップで検索した事により、それは急激に現実味を帯びてきました。

そこで僕は友達に、件の違法民泊「Oマンション」に肝試しに行こうと誘ったんです。

 

当日は真昼間だったんですが、いい感じの曇天でムード満点でした。

まず目に付いたのはマンション名。

「O」の部分がペンキで塗り潰してありました。

3階建てのマンションはポストから階段まで人1人が通るのがやっとという狭さです。

ポストを見てみると「308号室」の口に

 

「○○警察が捜査中のため近づかないでください。

もし不審者を発見した場合は○○警察に通報してください」

という旨の張り紙がしてありました。

 

これは殺害現場で間違いないと確信し、興奮しましたね。

もちろん308号室を拝みに行く事にしました。

ただこの時点までは何の異変もなかったんです。

 

僕と友達は3階を目指して一歩ずつ階段を上っていきました。

ただ僕にはOマンションが最近、凄惨な殺人事件があった場所だと知っているせいか、非常に空気がよどんでいる様に感じられました。

そして3階の一歩手前まで来た時、人がガサゴソと何かをしている気配を感じたんです。

 

僕と友達は通報でもされたら困るので、今上った階段をそろ~りと下っていきました。

その時、僕達の鼻を猛烈に苦い臭いが襲ったんです。

僕と友達はパニックになり、階段を駆け下りました。

マンションの外に出てもまだ猛烈に苦い臭いがします。

僕達は走って逃げました。

まだ苦い臭いがします。

 

100メートル程離れた頃でしょうか、やっと苦い臭いは薄れていきました。

僕は恐怖のあまり脂汗が止まりませんでした。

落ち着きを取り戻した僕達は、友達が形容するところの「正露丸の20倍苦い臭い」について論じ合う事にしました。

友達は「幽霊の臭い」なのではないかと言い、僕は「ここには近づくなという警告」だと言いました。

結局結論には至りませんでしたが、先程もお話した通り、Oマンションに足を踏み入れるまで、3階に近づくまで、「正露丸の20倍苦い臭い」はしなかったんです。

僕は2度と「Oマンション」には近づきません。

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