この話は、人恐に載っている「殺人強盗放火」の続きになります。
隣の兄さんが警察に逮捕され、テレビ局や
新聞社の取材が溢れた。
婆ちゃんが、隣の家の蔵を指しながら「みながら戸たでろ!(全部の戸を閉めなさい)」
と言った。
そして、隣の家で昔おこった事を話だした。
お隣には以前、殺人事件をおこした兄さんの、お婆さんが旦那さんの死後、一人で住んでいた。
梅婆ちゃん。(うめばあちゃん)
私の婆ちゃんの親友だった。
梅ちゃんは後妻だったらしい。
ある時、梅ちゃんの家の蔵を一緒に片付けるコトになった。
滅多に開かない蔵の中はヒンヤリしてカビ臭く気持ち悪かった。
蔵の窓を開けようと、中二階(ロフトの様になっている場所)の階段に、梅ちゃんが足をかけると 階段ごと床 が落ちた。
物凄い衝撃と物が壊れる音、立ち昇るホコリで何も見えなくなった。まるで爆弾が落ちたようだったと、婆ちゃんが言っていた。
真っ白いホコリの中でヨタヨタと梅ちゃんが起き上がった。
壁をかきむしる様に指を曲げ、腕を吊られる様に高く上げ、ゴニョゴニョ何か言っていた。
うなだれた首を上げて「七代までも祟るべし!!」と叫ぶと、ドーンと人形の様に倒れた。
倒れた梅ちゃんに駆け寄ると、辺り一面に骨壷の破片と位牌、人骨が散らばっていた。割れた骨壷から舞い上がった人灰が生きている様に踊りあがっていたそうだ。
それを見た継子は、継母の梅ちゃんを遠ざける様になった。
婆ちゃんは「あそこは座敷牢みだいに使ってだんだがすんね」と言った。
位牌も骨も、長持ち(嫁入り道具などを入れる、黒い木箱)に入れ、今もそのままになっているだろうと。
座敷牢は暗く寂しかっただろう。誰かを恨まずにいられいほど、辛かっただろう。
『七代まで祟る』と言ってたけど、誰が
7代目なのかは、わからない。
梅ちゃんの継子だった、おじちゃんは事件後、家に閉じこもり、奥さんは急死した。
殺人をおかした兄ちゃんは刑務所の中。
二人とも、一人きりで座敷牢みたいな所にいる。
ソウサセタモノタチと同じ様に牢に閉じ込められ縛られ、この代で家は途絶えるだろう。私は、コレが偶然には思えない。
自分の 子孫 を呪い、他人の命を奪う道を選んでしまったモノタチは『祟ってやる』という 願いが叶って も 救われる事はない。