弟の話

これは、私の四つ下の何でもない弟の話です。

私の弟は霊感があるとか、超能力があるとか、
そんな特別な存在ではなくなんでもないただの青年です。
ただ、弟には不思議な力があるんじゃないかと思うことがあったので、
そのことをお話します。

仮に弟をAとします。

もう10年ほど前、私の母方の祖父が大きな飼い犬を散歩中、
引っ張られて大きな溝へ転落しました。
たまたま目撃者がいたのですぐに救急車で大きな病院へ運ばれましたが、
意識は1週間ほど戻らず、脳出血を起こしていたため、医師からも

「もうこのまま目を覚まさない確率はかなり高い。
目を覚ましても何も覚えていなかったり、喋れない、
動けなくなっている可能性はかなりある。
いつ死んでもおかしくない」
と言われていました。

そんなことがあり私の家も母方の親戚もバタバタしていて、
毎日のように病院へ通っていました。

そんな時、確か祖父が入院して3-4日目、
私の弟が病気になり、祖父と同じ病院の小児科へ入院しました。
病名は覚えていませんが、しばらくベッドの上で
安静を強いられていたような気がします。

弟は祖父のお見舞いに行けず、毎日のようにお見舞いに来る母に
今日はおじいちゃんどうだった?」
と聞いていました。

そんな状態が4日ほど続いたある日、
母と祖母が祖父のお見舞いに行っていると、急に祖父が
ちょっとAくん、そこは触っちゃダメだ、ダメなんだよ」
と言い目を覚ましました。

急なことで母も祖母も驚き、急いでナースコールで看護師と医師を呼びました。
検査をいくつか行い、医師からも
「目が覚めたのは奇跡だ。Aくんの思いが通じたのかもしれない」
と言っていました。

そこで気になるのは祖父の言った
「Aくんそこは触っちゃダメだ」
でした。

勿論弟は入院中で祖父の所には行けず、
母と祖母が祖父の近くにいたので弟がいなかったことは証明できます。
しかし祖父は
「Aくんが来てな、わしの腕の点滴を触って遊ぶんだ。
ダメだって言ってるのに聞かないんだよ」
と言いました。

夢でも見たんじゃないの、という話になりましたが
弟が祖父の夢か幻かに出てきたおかげで祖父は意識が戻りました。

2つ目は、先程話した祖父の母、私から見て曾祖母の体験した話です。
曾祖母は県外の山奥に住んでおり、なかなか会いに行くことも出来ませんでした。
年に1度、お正月の時だけ挨拶に行くような。
曾祖母は若い頃に視力をなくし、もう何十年も両目盲目で生きていました。

そのため、私や弟が生まれた時、
両親は挨拶には行ったものの曾祖母は私たちの顔を知りません。
そんな曾祖母がある時高熱を出しました。
なかなか熱が引かず、眠っている時間も長くなり、
一緒に住んでいる祖父の弟のお嫁さんが世話をしていました。

曾祖母が自分で動けないので女ひとりで病院に連れていくのも難しく、
救急車を呼ぶべきかと悩んでいたそうです。
私の母は看護師なので、謎の高熱なんだ、
どうしたものかと相談の電話がかかってきていました。

ある日再びお嫁さんから電話がありました。
母が電話をとるとお嫁さんはすごい勢いで

「〇〇ちゃん(母の名前)聞いて!
今日ね、おばあちゃんが急に部屋の入口の方に向かって
あらあAくんよく来たねえ。遠かったでしょ、もっと近くに来て』って言ったのよ!
しかもその後から少しずつ具合が良くなってきてるの」
と言ったのでした。

勿論母は弟を曾祖母の家に連れて行っていません。
しかも曾祖母は弟の顔を知りません。
しかしお嫁さんが言うには、曾祖母は、
そこにAくんがいるでしょうとにこにこと微笑むのだと言うのです
お嫁さんも母も驚いていました。

このお話は特に山も落ちもないのですが、人の夢か生死の狭間に登場し復活へ導く、
何でもない私の弟のお話でした。

ただ一つだけ気になるのは、弟は昔から怪我の耐えない子でした。
今でこそあまり怪我をすることも無くなりましたが、
小学生の頃は毎年のように骨折をしたりと大きな怪我をしていたのです。

弟の上が女二人ですから、家族も男の子なんてこんなものでしょう、
元気があってよろしい、とか言っていたのですが、
周りの子にそんなに怪我をする子もいませんし、
弟はそんなにアクティブだということもありませんでした。

普通に遊んでいるのに、何故か怪我をすることが多かったのです。
祖父や曾祖母の話もありますから、
もし弟が人の不幸を吸い取ってしまう体質ならどうしよう‥‥と思うばかりです。

朗読: 小麦。の朗読ちゃんねる

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