爺ちゃんの墓参り

俺は大の爺ちゃんっ子で、いつも爺ちゃんと一緒にいた。
釣りやら将棋やら、趣味が大人っぽいのも明らかに爺ちゃんの影響だろうな。
そんな爺ちゃんは俺が17歳の時に病気で亡くなった。

爺ちゃんは昔から豪放な性格だったから、病院にいる間だって隠れて酒飲んでたくらいだ。何度看護師さんに注意されたって止めはしないどころか、『ははは!好きなもん止めてまで老いさらばえる気なんぞないわい!!』と言い放っていた。

そんな爺ちゃんが俺は大好きだった…
豪放で大雑把な爺ちゃんだけど、曲がったことが嫌いで友達の為なら自分がどんだけ痛い思いしようが傷付こうが構いやしない、そんな人なんだ。
爺ちゃんはいつも俺に『おうボン!おめえが20歳になったら爺ちゃんと酒盛りするぞ!だから、それまで絶対に酒やんじゃねえぞ!ボンと最初に飲むのは爺ちゃんなんだからな!!』と言っていた。

俺も最初に酒盛りするのは絶対に爺ちゃんとって決めてたのに…約束を果たす前に爺ちゃんは亡くなった… 病院のベッドの上で息を引き取る間際、爺ちゃんは俺に向かって笑顔でこう言った。

『大丈夫だ…爺ちゃんがボンとの約束破るわけねえだろ?こんな病気の1つや2つ、すぐに治してやるさ!だから、爺ちゃんとの約束…忘れないでくれよな?』

その数時間後、容態が急変した爺ちゃんは息を引き取った…
それからの俺はすっかり塞ぎ込んでしまい、両親や友達ですら近寄るのを躊躇わせたくらいだった。 それでも、爺ちゃんの命日に初めて墓参りした時にようやく爺ちゃんが死んだことを実感した。

そして…3年目の墓参り、この日はいつもと違った。
20歳になり成人した俺は、爺ちゃんの好きな日本酒を持って墓参りに来た。
『爺ちゃん、俺こないだやっと20歳になったよ。』
そういって花と線香を供えて墓前に手を合わせる。
『爺ちゃん、やっと約束を果たせる日が来たよ… これ、爺ちゃんの好きなお酒だよ、コップは2つ持ってきたからさ』
俺は2つのコップに酒を並々と注ぎ、1つを墓に添えた花の横に、1つを自分で持った。
『爺ちゃん…乾杯!』
ゆっくりと墓に供えた酒入りのコップに自分のコップを当てる。
コン…と小さい音を立てたあと、俺はコップの酒をひと口飲む。
初めて飲む酒の味は少し辛くて…美味かった。
いつも爺ちゃんの飲んでた酒の味を知れて嬉しかった。

ふと爺ちゃんの墓に供えたコップを見ると…
俺のコップと同じように、ひと口分酒が減っていた。

俺はコップの酒を一気に飲み干した、墓に供えたコップを見ると、酒は空っぽになっていた。
『爺ちゃん、また来年も一緒に飲もうな』
そういって墓に供えたコップを持って墓を後にしようとした時だった、どこからか暖かい風が吹いてきた。
なんとなく、爺ちゃんの匂いがした。
『ボン、この酒美味えだろ?』
爺ちゃんにそう言われたような気がした。

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