これは僕が実際に体験した話です。
18歳の頃、当時高校を卒業したと同時に自動車学校に通っていた友達は次々と免許を取っていました。
僕はというと、地元から離れ都会の専門学校へ進学する為、車の免許は必要ないだろう、という考えで自動車学校には通っていませんでした。
その年の4月には僕はもう地元にはいないので、免許を取りたての友達が思い出作りに、と「ドライブにでも行こうよ」と、夜も更けてきた街をドライブしました。
地元は田舎なので深夜に集まって出来る事といえば、ドライブくらいなんです。
その時のメンバーが4人。いずれも高校の友達です。
僕は後部座席に座り、「もう、こいつらともしばらく会えないのかぁ」なんて
考えながら、夜中の街を車に揺られながらボーッと眺めていました。
それを察したのか、運転席の友達がEDMのCDを爆音で流し始め、車内は一気にクラブ状態に。
車の中は先程の雰囲気とは打って変わって盛り上がりを増し、高校の思い出話に花が咲きました。
しばらくすると、一人の友達が「ねぇ、H町に行こうよ」と提案。
H町とは海に面した港町で、昼の海岸から見渡す海はとても綺麗で、僕らもよく遊びに行っていた町です。
ですが海岸沿いの駐車場での練炭自殺が後を絶たず、おまけに墓地が至る所にある為、心霊スポットとしても有名なんです。
全員がその意見に賛成し、H町に行くことにしました。
時刻は既に深夜2時、この時間帯になれば頼りない薄い明かりを放つ街頭が数十m感覚でポツン、ポツン、とあるばかり。
先程まで盛り上がっていたのにも関わらず雰囲気は急変。
張り詰めた空気がツーン……と車内に渦巻いていました。
(なんだか気持ち悪いな……)
そう思ったので「よし! ここを出よう!」と手を叩き、少し張った声でみんなに言いました。
運転席の友達が「……そうだね」と震えた声で返事。
その町を出た瞬間、雰囲気は明るくなり、合図みたいにみんな話し始めました。
その後は特に何もなく、助手席の友達の家に泊まりました。
という話を、この前当時のメンバーで集まり、飲みの席で話していたんです。
「あー、そうそう、そんな事あったね〜」
「懐かしいな。あの時の雰囲気まじやばかったよね」
なんて話していた時に、妙な違和感に襲われました。
「なぁ、あと1人……誰だっけ?」
と聞くと、助手席に座っていた友達が
「え? 俺だろ、で運転してたのはこいつで、後ろに座ってたのはお前で……え……」
その瞬間全員が顔を見合わせました。
確かに今回の飲み会、僕を合わせて3人しかいないのです。
あと1人がどうしても思い出せない……。
でも確かにいた。僕の隣に。
酔いもすっかり覚めてしまい、その日は解散しました。
未だに思い出せないんです。
僕の隣に誰がいたのか、そしてあの時「ねぇ、H町に行こうよ」と言ったのが誰なのか。
あのまま道を引き返さなかったらどうなっていたのでしょうか?
僕達は人間じゃない、”ナニカ”とドライブしていたのでしょうか?