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橋の上の潔癖な幽霊

もう10年以上前の話になります。

新卒採用で入社した畜産関係の会社は、新規立ち上げということもあり、かなり多忙でした。 朝は5時から呼び出され、夜も午前2時まで拘束されたりが普通でした。
その為自然と車中泊が増え、車には生活用品からコンビニ等で買った食べ物のゴミなんかが散乱していました。

汚水処理施設のトラブルで午前2時まで会社で仕事をしていた帰りに、
24時間営業のある大型スーパーに寄った時のことです。

その大型スーパーまではちょっとした橋を渡って行くのですが、極限に疲れていたせいなのか、それともそう言う時間帯だったのか、変なものを乗せてしまいました。

眠気と闘いつつ事故を起こさないようゆっくりと走行していると、私以外誰もいないはずの車内から人の気配を感じます。
ルームミラーで後ろを確認すると、まだ若い風貌の女の人が後部座席に乗っていました。

疲れで思考回路も上手く働かず、あれ?なんかいるなぁ……くらいに思ってたら急にルームミラーから消えて、次の瞬間には助手席まで移動してきていました。
そして一言、きったな…と言って消えました。

車中泊ばかりでゴミだらけ、生活用品だらけで、正直他に人を乗せたりは出来ないなと自覚はありましたが、初対面の乗せた覚えもない人?にそんな事を言われて私は変なスイッチが入ってしまい、その場で車を止めて誰もいない空間に泣きながら俺だってこんなハズじゃなかった!と叫び続けていました。

その日は朝になり警察にトラックの運転手か誰かが通報したのか、警察に保護され限界だなと感じその後すぐ仕事を辞めました。

未払いだった残業代なんかを請求し、それらが全て振り込まれた後、私は車を新車に替えて再びその橋を訪れました。
そしてあの日と同じ時間帯にその橋をゆっくりと走行し、どうだ?これなら文句ないだろ?と言ってやりました。
また何も前触れも無く助手席に乗ってきた女は嬉しそうにフフフと笑っておりましたが、私がクシャミをするとまたきったな…と言って消えていきました。

流石にそのくらいは許してくれよ…と思いましたが、翌日に実家に帰ることになっているので、それからあの橋には訪れていません。
辞めるキッカケをくれたアイツには今でもちょっとした感謝をしています。

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