一夜の謎

私が小学生の頃の話です。 暑い夏の夜でした。

リビングに備えられている冷房を利かせ、
その直線状にある一室で家族が川の字で寝るのが習慣になっていました。
ただ、その日の数日前が私の誕生日で、当時発売されたばかりだったゲーム機を買ってもらったこともあり
家族が寝息を立てる中、ばれないように布団に潜り込んで没頭していました。

夜も深まり、深夜1時ごろだったと思います。
リビングの食器棚が「ガシャン!」と音を立てました。
突然音が鳴るのはどこにでも起こり得る現象なのですが、
何せ私は小学生だったこともあり、その音だけで完全に硬直してしまいました。
数秒間心臓がバクバクと鼓動を早めましたが、
少しするとゆっくりと落ち着きを取り戻しました。
無意識に呼吸を止めていたこと、
異常な量の手汗がゲーム機に付着していることを確認し、まずは涼しい空間に出ようと布団をめくりかけました。

その瞬間。 「ギィ…」リビングで明らかに床を踏む音が聞こえたのです。
家族は間違いなく同じ一室で寝ています。
私は完全に参ってしまい、より強固な布団の壁を築こうと再度潜り込みました。
が、再度「ギィ…」さっきより近い位置での足音。 もはや恐怖でしかありませんでした。

今布団をめくると髪の長い女の人が目の前に立っている。
そんな妄想が膨らんでは、より鮮明なクオリティで脳内に再生されるのです。
気配といえばいいのでしょうか。 もはや妄想のせいなのかはわかりませんが、
自分の近くに何かが居る。 そんな妙な確信さえありました。
どれくらいの時間布団にもぐっていたのかはわからないのですが
「キュキュ…」窓ガラスを指でこするような音がしました。
またその瞬間、ふいに気配が消えたのです。
数秒後、暑さに耐えきれず私はゆっくりと布団から顔を出しました。
涼しい空間と急にほどけた緊張からそのあとすぐにねむってしまったのですが…。
ただ、眠りにつく寸前に見た窓には、
くっきりと同じ波を描いた4本の縦筋が残っていました。 ただ、それだけの話です。

怖いかと言われればそうでもないと思うのですが、子供の時分。
何よりも印象的な夏の夜でした。
しかし、なぜ今更こんな話を書くかといえばなんですが、
最近になって知ったことがあったのです。
室内が涼しくて外が涼しいときって窓の外側に結露が起こるんですね。
あの4本線、外からついてたのかと今更ながら思うと同時に、やっぱり疑問が残るんです。 うちの実家、部屋は3階で窓の外側には転落防止の格子が付いてるんですよね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

閉じる