探し物

これは、俺の従兄弟が実際に体験した話です。

従兄弟はとりたての免許と乗りたてのバイクで毎日一人でツーリングをしていました。
俺は今日は何処何処に行っただとかツーリングに行く度に話を聞かされていて正直、
そんなに聞く耳を持ってなかったのを記憶しています。
そんな従兄弟ですが、霊感は多少ある(自称)らしく気味が悪いところでの寒気や視線、
気配など感じたりは頻繁に有るそうで、
実際に見た!とかというのはほんの数回程度だそうです。

ですが、ある日を境に意味のわからない事を二日間位に渡って話すようになりました。
一日目は「あそこにいたあいつはなんだ?!誰だ?」
二日目は「もう勘弁してくれ、俺が何したってんだ」
これをずっと繰り返し言っていました。
俺はどうせなにかの思い過ごしだろうといつも通り軽く受け流しながら話を聞いていました。

三日目 窶れた顔の従兄弟は今回ばかりはマジで聞いてくれと声をあらげて言ったので仕方なく話を聞くことにしました。
従兄弟はいつも通りの時間に今日はちょっといつもと違う所に行こうとバイクを走らせました。
場所は山奥にあるダムです。
此処は、新潟では結構有名な心霊スポットとなっている場所で死体が上がったりなどの報告が絶えず、怖いもの知らずの若者たちが夜になるとこぞってくるような場所です。
そんな気はなしで普通のツーリングで走っていたそうなんですが、
その日はいつもなら通りすぎるようなダム内の小さなトンネルを通った従兄弟。

中はじめじめしたような雰囲気で、昼間なのに向こう側の光が消されるくらい暗く普段だったら絶対に立ち入らないようなトンネル。
トンネルに入った時点で、寒気やはりつめた視線を感じたりして本来ならまず途中で引き返すような場所だと言っていました。
なぜか自然に運転していて気が付いたら既にトンネルも半ばで、
良かったとおもった瞬間に右の方から今までと違う重い空気と、殺気だった視線を感じ、
本能的に振り向くとそこには黒いボサボサの長い髪、青白い肌、目は黒く鉛筆で塗りつぶされたような感じで、
何処を見ているのかわからない老婆が立っていたので、シカトして何事も無かったかのようにトンネルを後にしたそうなんですが、
その後もずっとさっきのやつが後ろにのってる気がして振り向けないし肩が重いし痛いと言っていました。

今話したのが前置きでここからが本題です。
俺がこの話を聞いた日の 夜中から朝にかけて従兄弟は2度夢を見たそうです。
その夢内容の会話

従兄弟「俺の部屋で自分が寝ている姿を客観的に見ていて、寝ている自分を部屋の隅からみていると階段を登る音がしてさ、いつしか階段を登りきってガチャッとドアノブが開くんだよ。そこにはダムにいた老婆がいて中に入ってくるんだよな。」

俺「え、なにそれ(笑)」

従兄弟「入るや否やなにかを探していてタンスの中とかを漁ったり部屋の色々な物を見て物色してて、
なんだこいつはとか思った矢先にさ、俺が寝てるベットまで近寄ってじっと寝ている俺を奴が見てるところで夢から覚めたんだけど寝たらまた直ぐに同じような夢を見たんだよね」

俺「ほうほう、そこから?」

従兄弟「今度はさっきより顔を俺に近づけて立ったままずっと寝てる俺の瞼を見てて、気持ち悪って思ったらまた目が覚めてさ」

俺「それなんか怖い話にありそうだな~(笑)それで?」

従兄弟「携帯の時計を確認してまた眠りにつこうと眼を閉じたらいきなり金縛りになってさ、身動きや声も出せなくなっちゃって、
少し金縛りが続くとは、今度は階段を登る音がして金縛りになりながら鳥肌たってまた夢かと思いきや、完全に現実で同じ流れで老婆が入ってきて、
物を漁るからもうこれは何とか寝るしかないって思って、頑なに眼を閉じてたんだけど、
濡れた髪の毛?みたいなのがほっぺに当たってて気持ち悪いしこえーけど絶対眼を開けちゃダメだって思って眼を閉じてたんだけど
こじ開けようとしてたのか瞼を指で上げようとしてきてさ、
心のなかで死んじゃった母親に助けてくれってずっといってたらやっといなくってて
気付いたら気を失うかのように寝てしまってた。
母親が守ってくれたんだなきっと」

と言っていました。
実際、中学生に上がる頃に母親を亡くした従兄弟。
ほぼ毎日顔を合わせて話したりしていたので、
そのときの顔や話す内容に違和感を感じました。
顔はほんの数日の出来事でしたが、窶れていて見違えるほど痩せていて1日中ずっと同じ話をしていました。

普段、心霊スポットや幽霊の話などオカルトには一切興味がないし、
悪い霊というのを知ってるからかまったく心霊に関する話を話すらしない従兄弟なので、この話を聞いてオカルト好きの俺ですら鳥肌がたちました。
実際に俺もこのダム内にある小さなトンネルは見た事がありますし
霊感が皆無の俺も死んでも入りたくもないと思うほどでした(笑)
老婆の噂も聞いたことがある場所なので、
信憑性が高いことからこの話だけは数年たった今でも鮮明に記憶していて信じています。

朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

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