狐男

母から聞いた話です。
母が子供の頃、家の近くの河原で一人で遊んでいると男が夕日を背にして歩いて来ました。
遠くからはよく分からなかったのですが、段々と近づくにつれ、男の頭の上に狐の耳の様な物が生えているのが見えました。
逆光で顔が分かりにくかったのもあり、真っ黒な顔の狐男がどんどん近づいてきました。

母は恐怖の余り、腰を抜かして歯をカチカチさせながら動けませんでした。
あともう少しで手が届きそうな距離まできた時、
「ワー!!」という声と共に、竹箒を持った近所のお姉さんが狐男めがけて突進してきました。
「はよ逃げ!!」その声と気迫で我に返った母は、泣きながら走り家に帰りました。

その日怖くて、家族に何があったのか聞かれても答えられず、部屋に閉じこもっていました。

次の日少し落ちついた母は、やっと近所のお姉さんがあの後どうなったのか気になり、お姉さんの家まで訪ねに行ったのですが、
体調が悪いとの事で取り次いでもらえず、その後も何回か行ったのですが、体調不良のまま会えませんでした。

その後、すぐに引っ越す事になりお姉さんとはそれきり会えませんでした。
あの日から引っ越すまで、母は一度も狐男と会った河原には行かなかったそうです。

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