呪われたマンション

あれは、私の姉が引っ越した時のお話です。

当時の私は中学2年生。むせ返るような暑さの夏でした。
7つ離れた姉は結婚をし、「子供も産まれたから今より広い家に引っ越すね」と母へ電話をかけてきました。
「2LDKの家にしたんだけど、玄関から真っ直ぐ廊下で、突き当たりに洋室。その手前の右側にトイレ。廊下の左側にキッチンがあって、キッチンの奥が和室になってるの」
家の説明を聞き終わると同時に母は、「その家は少し気味が悪いからやめたら?」と。
実は母と私は弱いながらも霊感があり、母は何かを感じ取ったらしい。
母の不安をよそに姉は、「一目見てこの家がいいって思ったし、契約済みだから!」と。

その1週間後。母と2人で姉の新居に遊びに行きました。
姉の部屋は202号室。
2階なので階段で行こうとしましたが、【工事中の為使用禁止】の張り紙が。
仕方なくエレベーターで上がり、家のインターフォンを鳴らしました。
家に入れてもらい、和室で寛いだ後、私はトイレへと席を立ちました。
その日は8月半ばだったのですが、トイレへと続く廊下は少し肌寒く、昼間なのに薄暗かったのを覚えています。

用を足し終わり、出ようとした瞬間。
【ドンドンドン!】隣の部屋から壁を叩く音が。
「誰か隣にいるのかな?」そう思い、隣の洋室へ。
ドアを開け、薄暗かったので電気をつけるとそこは、7畳ほどの物置部屋でした。
誰もいない。誰か驚かそうとかくれているのかも。
そう思い部屋へと足を踏み入れました。

すると、【パチッ】と、電気が消えたのです。
驚いた私は後ろを振り返りましたが、誰もいません。
薄暗くなった部屋は不気味さだけが残り、何故かクローゼットの方から視線を感じたのです。
引き寄せられるように足が動き、扉に手をかけたその瞬間、金縛りにあったかのように身体が動かなくなり、クローゼットの扉がゆっくりと開かれました。

そこには、50代半ばの鬼の様な顔をした女が立っており、私を睨みつけていたのです。
向こうの和室から聞こえた母の笑い声で我に返った私は、逃げるようにして洋室を出ました。
和室に戻った私は、先程の出来事を話そうとしましたが、引っ越してきたばかりの姉を怖がらせてはいけない。
そう思い、気のせいだと自分に言い聞かせました。
和室で先程の事を忘れようと、他愛ない会話を楽しんでいる時。
とてつもない寒気に襲われました。
みんなに「寒くない?」と聞きましたが、「そう?暑いぐらいよ?」と言われたため、毛布を貰い1人震えていました。

すると、玄関の方から、【ガチャッ。バタバタバタッ】廊下を走り回る音が聞こえてきました。
誰か来たのかと思い、向かいましたが、玄関には鍵が掛かっており勘違いだったのだと思いました。
しかしその後も【ガチャッ。バタバタバタッ】【ガチャッ。バタバタバタッ】
何度も何度も聞こえ、母や姉に「なんの音?」と聞きましたが、何も聞こえないとの事。
さっきの女の人のことや、私にだけ聞こえる音が怖くなり、母に「もう帰ろう。」そう言って姉の家を後にしたのです。
その帰り道、母に姉の家で起こった出来事を正直に伝えると、母は、「玄関を開けた時に、洋室に見えた影は気の所為じゃなかったのね」と。
それから1ヶ月がたった頃、姉から電話がかかってきました。
姉の話によると、昼間生後半年の息子とのんびりしていると、下の階の住人から、走り回る音が五月蝿いとの苦情が毎日のように続いたり、閉めたはずのカーテンや襖が開いていたりと。
不可思議な事が続くため、旦那と相談し、家に盛り塩を置いたそうです。

すると次の日から、姉と旦那は原因不明の高熱がでて、今現在入院中との事。
その話を聞いた母は、「今すぐその盛り塩をやめなさい!知識も無いのにそんなことしたら命に関わるよ!」結局2週間程入院した後、盛り塩をやめ、逃げるようにしてその家を引っ越しました。

姉が引っ越して数ヶ月後。そのマンションの201号室に、私の知り合いが住んだそうです。
その人から聞いた話では、夜中使用禁止中の階段から走り回る音が聞こえたり、深夜2時になると部屋から子供の泣き叫ぶ声が聞こえたりするとの事でした。
結局その知り合いも1ヶ月経たないうちに出て行きました。

その後気になった私はそのマンションの事を調べると、数年前に当時3歳だった少年を母親が殺害。
その後クローゼットの中に放置し、悪臭がすると近隣住民の通報により発覚。
部屋番号は載ってはいなかったので分からないのですが、あの部屋で見た女と走り回る音はその親子だったのでしょうか。
【続いてのニュースです。○○県○○市にある○○マンションで昨夜、5階に住む女性が自分の子供を殺害したとのことです。その女性は自分の子供を殺害した事を、覚えていないと供述しています】

姉がそのマンションから、直ぐに引っ越していて良かったのかも知れません。

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