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防空壕の女

私が中学に入ってすぐの頃だったので約6年前の話になります。
私の住んでいる街には山があります。
頂上には街を一望できる展望台と、大きな噴水がありました。
その山はネットで調べるとちょこちょこ霊的な話が出てます。

この山のふもとに大きな池があるのですがその池から生首が出ていたり、立ち入り禁止の道があるのですが、その道を行くと戦争があった時代に避難場所として使われていた防空壕(ぼうくうごう)があり、そこから女の人が出てくる、などの話がありました。

ある日、私は友達2人とその山へ行き、カナヘビというトカゲを捕まえに行こうとしました。
その日はテストが近いということもあり早帰りで14:00頃に帰宅したのですが、学校のルールで16:00までは自宅で学習しなければならない日でしたが、そんなことを守る人なんていませんでした。

探し始めて3時間が過ぎた午後5:30頃、いくら探しても見つからず、もう帰ろうかなんて話してたのですが1人が 「ねぇ、防空壕に行ってみない?」と言いだしました。

私ともう1人の友達は心霊が大好きだったので行くことになりました。
立ち入り禁止の看板に括りつけられていたトラロープを跨(また)いで、どんどん奥に行きました。
奥へ行くと友達が 「なんか……ジメッとするね」なんて言いました。

その日は梅雨の季節だったのですが、数日前の大雨を感じさせないほどの快晴で半袖でも暑いと感じるくらいだったので、空気が悪くなっているのはなんとなく感じ始めてました。
「あったよ」
もう1人の友達が防空壕を見つけたようでした。
確かに目の前には直径1.5m程の穴があり中は真っ暗でした。
友達が 「おぉー。これが防空壕かぁ……」 なんて言ってたのを聞き、
「なんだ、なんも出ねぇのか……」
なんて思い、今来た道を見ると白い服を着た女性が50m程離れたところからこちらを見て立っているのです。
私はまずい。と思い、友達二人に小声で
「ねぇねぇ。後ろから白い服の女来てるんだけど」
と言うと友達が振り向くなり
「え?どこ?」
と言うので
「いや、だから後ろにい………あれ?」
後ろをむくと誰もいなかったのです。

友達は私が驚かすために言ったものだと思ったようで、私はずっと
「い、いや!いたんだって!俺が後ろむくと女がこっち見てたの!だいたい50mくらい離れたところから!」
友達は「はいはい。」って聞き流しましたがずっと
いやホントなんだって!」とずっと言っていました。

来た道を歩いて立ち入り禁止の看板の裏面が見えた頃、私はもう一度振り返るとその女が立っていて、あることに気がついたのです。
その女、左腕と右目が無いんです。
ワンピースみたいなものを着ていて左腕はなく、右目は真っ黒になっていて、私は友達に話しても無駄だと思い、見て見ぬふりをして駐輪場に戻り山の裏側からみんなでブレーキをかけずに猛スピードで下山することになり、みんなペダルに足をかけずに足をピンと伸ばしたままハンドルを握っていました。

私はあまりに爽快で女の事を忘れていましたが下山の途中、
耳元で「なにしにきたの?」と女性が囁(ささや)きました。

私はその瞬間恐怖で胸がいっぱいになり、全力で自転車を漕いでしまいました。
友達二人が「おい!止まれ!事故るぞ!」と言っていたみたいなのですがそれどころではありませんでした。
私は途中で盛大に転び、前歯2本が抜けて、両脇にあった八重歯は欠けて、歯茎と唇が血まみれ、そして膝は骨が見えるくらいまでえぐれて、体全体的に大怪我を負いました。
私はそこで気を失い、気がつくと大きな病院で夜の8:00になっていました。

友達がスマホで救急車を呼んでくれてたみたいで周りには、親父、母親、兄が私を囲っていました。
母親が「翔太?大丈夫?」「ここどこかわかる?」と、どんどん質問してくるが、歯が欠けている上に口の中が全体的に口内炎のような痛みに襲われているので、喋れるわけもありませんでした。
医者が「翔太くん、これ何本に見える?」と聞いていたので、私の太ももあたりに「3」と指でなぞりました。
「頭は強く打ってないみたいですね。念の為レントゲンなど撮ろうと思います」
と医師に言われ1週間は入院してもらうという話をされました。

母親は着替えを取りに家に戻り、父親は次の日午前3:00には起きて仕事に行かねばならないとのことだったので、私が帰って寝てくれと頼みました。
病室に残ったのは私と兄だけになりました。
「お前、まさかだけど防空壕……見た?」と兄は聞いてきました。
私はコクっと頷きました。
兄は「………やっぱり。」とボソッと言いました。
「いや、俺の友達の○○も交通事故にあったじゃん?。○○が交通事故にあう前に山で防空壕に行って女を見たんだって。そんで事故に遭う直前に耳元で『なにしにきたの?』って囁かれたって話聞いたから…。」

この話を聞き私はあの女はそっちの世界の者だと確信し、恐怖しました。
1週間の入院生活が終わり、今度から2週間に1回の通院になりました。
入院が終わって学校に行くと、先生達に心配されたが同時に怒鳴り散らされた。
「翔太 学習時間守らなかったのか!?」
「○○山の立ち入り禁止のとこ入ったのか!?」と質問責めにあいました。
どうやら友達のひとりが私の事故がショッキングだったようで、先生達に全部正直に話したようでした。
学年主任が「渡辺、心配したんだぞ。もう心配させるようなことはするな」と一言。

学年主任だけは私を怒鳴ることはしませんでした。
今回のテストは私が入院している間に実施されていたので、私はみんなが授業を受けている間にテストを受けることになりました。
放課後 友達二人が「ごめんな。俺翔太が言ってたこと嘘だと思ってた」と言ってきました。

ここからは友達が後ろから見てた時の話ですが、私が無我夢中で自転車を漕いでいる時、私は急に横切ってきた女とぶつかり事故ったらしいのです。
しかし女はすぐ消えたとの事でした。
高校に入って同じ街の友達が言っていた話なんですが、夏祭りがあった日にその友達が5人程で防空壕に行った時、友達が防空壕から白い服の女が出てくる瞬間を見たらしいのです。

あれから6年間、あの山に登ることはなかったのですが免許を取り、親から就職祝いに買ってもらった車で1人で山に来ました。
高校卒業後、食品関係の会社に内定を頂き、春から上京するので地元の色々なところをまわっていました。立ち入り禁止の看板を見て懐かしく感じました。
あの女は看板の奥で今でも立っていました。
もう二度とこの山に来ることはないだろうと思い、私は車を走らせました。

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