百物語

これは私と幼馴染み3人の、始まりのお話です。
私達がまだ小学生の頃のことです。

ある夏休みの夜、私は幼馴染みの友人3人と百物語をしました。
じゃんけんで順番を決め時計まわりに話していきましたが、3人の話す怪談はどれもゾッとするほど怖い話ばかりで、私も負けじと怖い話を語りました。

やがてロウソクの火が一つだけになった時、私達は怖くなり、誰が話すかでもめ始めました。
そのうち、一人が話し始めました。

それは、こんな内容でした。

『今から二十年前、ある学校の寮で起きたことです。 二人の男子生徒が同じ寮で生活をしていました。 仮に「E」と「K」としておきましょう。
ある夜、Eは隣で寝ているはずのKが居ない事に気付きました。
「トイレにでも行ったのかな?」
そう思い、いつの間にか寝てしまいました。
次の日、Kはきちんと隣の布団で寝ていました。
ところが、その日からKが夜中に何処かへ出かけ明け方に帰ってくることがあるようになりました。
不審に思ったEはある晩寝ているフリをしてKの様子を見てみることにしました。
やがて真夜中になり、寮の生徒達が寝静まったころ、Kはそっと布団から出ると寮を抜け出しました。
そして、寮の側にある物置からスコップと真新しい鎌を取り出すと早足で裏山の方に入って行きました。 Eもそっと後をつけていきました。
Kは山の奥にある墓場で足を止めました。
辺りを見回して誰もいないと知ると、スコップを地面に突き刺し墓を掘り始めました。
それは、つい最近交通事故で亡くなった若い男性の墓でした。
Eはそっと木の陰に隠れて様子を見ています。 30分ほど掘ったところで新しい棺が出て来ました。
Kは棺の蓋を開けると、死んでいる男性の片腕をそっと持ち上げました。
すると、持っていた鎌で男性の腕をグサッと斬り取ると、文字通り食らいついたのです…!

そのあまりにも恐ろしい光景にEは、はっと息を呑み、小さな物音を立ててしまいました。
するとKの血に染まった真っ赤な顔がEの方を向き……
K「見ぃたぁなぁあああ!!」
Eは思わず後ろに飛び退くと、先ほど来た道を夢中で走りだしました。
K「待てぇえ! 誰だぁあ!!」
Kはその後を、血の滴る鎌を振りかざして追ってきます。
山を駆け下りてきたEはそのまま自分の部屋(4号室)に向かい、頭から布団を被りました。

心臓は波のように高鳴っています。

間も無く寮に駆け戻ってきたKは鬼のような恐ろしい形相で1号室に入りました。
寝ている生徒の布団の脇から右手を差し入れ、その手を胸に当てました。
左手には血の滴る鎌を、今にも打ち下ろさんばかりに振り上げています。
胸に手を置いたKは心臓の動きが静かなのを確かめると 「お前じゃない」、

次に隣で寝ている男子生徒の胸に右手を差し入れました。 「お前でもない」と頷きます。

そうして2号室、3号室と入ってとうとう4号室に向かってきました。

Eは目を閉じて寝ているフリをしていますが、夜道を走ったのと恐怖で心臓は激しく高鳴っています。
そっと戸を開けて入ってきたKは寝ているEの布団の脇に右手を差し入れ、その手を胸に当てました…… 「 お前だ!!! 」』

これで最後の100番目の話はおしまいです。 ロウソクの火が消え、部屋の電気をつけました。
明るく楽しい雰囲気になり、安堵のため息をつきながら笑顔で感想を言う私達。
私「それにしても、最後の伊織(仮名/男)の話は怖かったね~」 そう言った途端、空気が変わりました。
伊織「俺は話してないよ? 風香(仮名/女)の声だと思ったけど…?」
風香「私は黙って聞いてただけだよ? 直人(仮名/男)の声じゃないの?」
直人「俺も黙って聞いてただけだよ、深央の声じゃないのか?」
………私達は思わず悲鳴をあげました…
一体誰が、最後の話を語ったのでしょう…

そして、この日を境に私達4人は、様々な心霊体験をすることになるのでした…。

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