スミ子さん

俺はたぶん一生独身なんだと思う。
そんな俺の話。

物心ついた時にはもうスミ子さんはいた。
視界の端ギリギリ、大体いつも左側に立っている。
ひょろりとした長身でピンク色のフリフリな服を着ていて、頭は普通の人より明らかに大きかった。 でも顔はよくわからない。
いつも視界の隅にぼんやり入ってるだけで、真正面からハッキリと見た事は一度もなかった。

母が言うには俺は小さい頃はよく泣いていたらしく、ひょっとしたらスミ子さんが怖かったからかもしれない。

ただずっといるからさ、気付いた時にはそういう物だと受け入れていて、みんなにもそれぞれ何かしら視界の隅にいるんだとすら思ってた。

小学生になり、家族や友達と話すうちにそれが自分だけなんだとわかってきて、また少し怖くなったけれど、どうしていいかわからないし、とりあえずスミ子さんって名前をつけた。

スミ子さんは四六時中視界の隅っこにいる。
だけど何も話さないし何もしてこない。
だからまぁ無害ならいいかって思うしかなかったんだ。

高校2年の時、初めての彼女が出来た。
でもすぐに別れた。

大学1年の時、また彼女が出来た。
やっぱりすぐに別れた。
どちらも俺がフラれる形だった。

就職してしばらくした頃、合コンで知り合った女の子と仲良くなって付き合う事になったんだけど、彼女から電話があってさ。
「ロリータっぽい格好をした背の高い女の人が部屋にいる」
震えながら電話してるのがわかった。
「それで別れろって言ってる。だからごめん」

それで全部察した。
スミ子さんが別れさせてたって。
不思議な事に彼女との電話中も俺の視界の左端にスミ子さんはいた。
ただいつもと違って笑っているような気がした。

理不尽だよな。
何で俺なんだろ?
先祖が何かしたのか、それとも俺が前世で何かしたのか?
お祓いとか出来るのかなぁ。
でももう三十年近くずっといるし、離れてくれそうにないよな。
だから一生このままなんだと思う。

同じ境遇の人、いる?

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