波間の友人

これは知人から教わったお話です。

高校二年生の時の事です。
二歳年上の彼氏と夕食を食べ終わる頃、彼の友達二人が彼を呼びに来ました。
三人で何やら深刻そうに話をしていたので帰ろうと思いましたが、結局私も一緒に出掛けることになりました。

沖縄の波之上大橋を歩こうと言われ、三人の邪魔にならないように私は少し後ろを歩いていました。
すると三人はふと立ち止まって、ずっと橋の下を覗き始めました。

(水平線は見ないのかな?)

反対側はビーチになってるので、そこを見ればいいのにな~なんて思いながら皆が覗いてる橋の下を見ました。
すると波消しブロックから一メートルくらいの所に、高校生くらいの男の子が右腕全体をゆっくりとふりながら「元気か~」と言っていました。

彼の友達だと思い三人に「友達?」と聞いたら、三人共ビックリして「どこだ?」と騒ぎ始めました。
しかし、そこにはもう男の子の姿はなく、代わりに二十代か三十代の男女五人ほどがこちらを見て笑っています。

「あぁ、これは生きてる人じゃない」
とその時気が付きました。

三人からどんな様子だったのか、怒っていなかったかなどを聞かれましたが、そんなことは一切なく、ただ久しぶりに合った友達に「元気か~」と言うようでした。
逆に三人に「何かあったの?」と聞くと、事情を話してくれました。

以前、仲の良い四人でここに泳ぎに来たこと。
亡くなった彼は一人で「波消しブロックのところまで泳ぐ」と言ったまま戻って来なかったこと。
そして、私が見ていた波消しブロックの付近で彼は亡くなっていたということ。

三人は「恨んでなかったか?」などと気にしてましたが
「全くそんな雰囲気はなかったよ」と私が言うと、
三人はしばらく暗い海を見つめたまま泣いてました。

朗読: 小麦。の朗読ちゃんねる

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