何でも軽くする手

これは私が高校生の時の数学のD先生に聞いた話。

D先生は大学生の頃、仲の良い友達のA,B,C,とD先生の四人で九州に旅行に行った。
時間だけは沢山あったから、青春18切符で電車を乗り継ぎながらのんびりとした旅だった。
電車の中で、同じ様に旅をしている二人組の女の子と知り合った。
彼女達は○○教団という宗教を信仰していると話してくれた。
そして自分達は、色々な物を軽くする事が出来ると言う。
女の子が「タバコありますか?軽く出来ますよ。」 と言って来た。
タバコを持っていた友達のAが『マルボロ』という銘柄のタバコを一本渡した。
女の子はタバコを手の平の上に乗せ上から覆う様に手をかざした。
10秒ほどすると「試してみて下さい」と笑った。
当時は電車の中でタバコを吸う事が出来たので、Aは女の子からタバコを受け取り吸った。
「なんか軽くなってる!マイルドな感じになってる!凄い!」
そう言って本気で驚いていた。 「おー!」と物凄く盛り上がった。
「他にはどんな物を軽く出来るんですか!?」と聞くと
「痛みを軽くする事が出来ますよ。どこか痛い所はありませんか?」と言われた。
D先生は「俺、腰が痛いんですけど・・・」と言うと、女の子はニッコリ笑って腰に手をかざしてくれた。
腰が『ぽかぁ』っと温かく感じて痛みが軽くなった・・・様な気がした。
本当は良く解らなかったが、その場のノリで「凄い!なんか軽くなった!」と大袈裟に言ってみせた。
Bがニヤニヤ笑いながら「そうだC、おまえ軽くしてもらえば」と言った。
Cは最近太り気味で服がキツクなってきた事を気にしていた為
「はい!次は俺を軽くして下さーい。おねがいしまーす」と、おどけて頼んだ。
女の子達は顔を見合わせて「え?できるかなぁ~」と首をかしげたが、 おもむろにCの額に手をかざした。
1分ほど手をかざしていたが、女の子は「ごめんなさい無理かも」と困った様に笑った。
Bは「そんなスグに痩せられねーって」とフォローし、 それからしばらく談笑していた。
その後D先生達は電車乗り換えの為に女の子達と別れた。

次の日Cが「俺、腹の調子悪いわ」と言いだした。
残りの旅行中Cはずっと腹の調子が悪く、薬を飲んで何とかしのいだ。
おいしい食事が楽しめなかった為に旅行の楽しみも半減し、旅行が終わる頃にcはベルト2つ分ほど痩せていた。
彼女達が友達をかるくしたのか、単なる思い込みだったのか解らない。
その時もっと別の事を頼んでいたらどうなっていたのだろうか?
体重じゃなくて、腕とか足とか簡単に分割できない物を頼んでいたらどうなっていたんだろうか。

先生には怒られそうで言えなかったけど、たまに思い出すと知りたくなる。

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