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伝わる感情 〜後日談〜

前の話→伝わる感情(http://hhs.parasite.jp/hhslibrary/?p=2061)

しつこい金縛りにあってから数日後の土曜日、
私はおばあちゃんを連れて病院に来ていました。

おばあちゃんには持病があり、週に一度診察を受けなければならず、それに付き添うのは私の役目でした。 持病のせいで入院も珍しい事ではなく、その時も一週間前まで入院していました。

おばあちゃんは足も悪かったので、入院すれば朝から夕食が終わるまで母が毎日付き添うのですが、面会時間が終われば帰らなければならず、同室の方にお世話になることも多々ありました。
そこで仲良くなったが隣のベッドのAさんという方でした。
ご自分も病気と戦っていらっしゃるのに、おばあちゃんの事も気にかけて下さる良い方だと母から聞いていました。

私は平日は帰りが遅く面会時間には間に合わないので土日に病室へ行くのですが、そのときはいつもカーテンを引かれていたので、お会いする事なく、おばあちゃんは退院してしまいました。

その日は退院して始めての通院だったので、おばあちゃんはAさんに会いに行きたいので連れていって欲しいと私に言いました。
もちろん私もお礼を言いたい気持ちもあったので診察が終わったら行こうと約束していました。

診察が終わり会計を待っていたら、お世話になった看護師さんが
「○○おばあちゃん!元気になって良かったね」
と声を掛けてくださいました。

おばあちゃんも
「看護師さんにはお世話になって、ほんまありがとう」
と嬉しそうでした。
この看護師さんは足の悪いおばあちゃんをとても気にかけてくれた方でした。

「私、今日はAさんに会いに行きたいんやけど、病室は変わってない?」
そうおばあちゃんが聞いたとたん看護師さんの顔色が曇りました。

「そうやね…おばあちゃん、Aさんと仲良かったもんね…」
視線を少し反らせ考えた後、ベンチに座るおばあちゃんの前にしゃがんで目を合わせ小声で教えてくれました。

「Aさんね、3日前に容態が急変して亡くなったんよ。ホンマに急でご家族も間に合わん状態やったん…こんなこと他の患者さんに言うたらアカンのやけど、おばあちゃん仲良しやったもんな。だから約束も守れんと思うけど許したってね」

看護師さんは寂しそうに笑い、立ち上がって
「じゃあ、また来週やね」 と行ってしまいました。

それから会計を済ませ、車におばあちゃんを乗せ帰路につきました。
おばあちゃんはショックが大きかったようで家に着くまで喋らなくなってしまいました。 私は”約束”と”3日前”という言葉に引っ掛かっていたので、昼食を食べ終え部屋でテレビを見ていたおばあちゃんに聞いてみました。

「Aさんって、隣のベッドの人やんね?」
そう私が聞くと、おばあちゃんはポツポツと話し始めました。

「そうや、あの人な、寂しい人やってん。一人息子のお嫁さんと反りが会わんで家族の中で孤立してしもうてな。私は1ヶ月ほど入院してたけど1回もお見舞いに来た人おらんかった。最初は気難しい人かなぁ思てたけど、毎朝おはよう言うて声掛けてたら洗面所でお湯でタオル絞ってきてくれて、看護師さん来るまでこれで顔拭いときって」
おばあちゃんの目は涙で濡れていました。

それからは母が来る前、帰った後にお茶を入れてくれたり、朝食の食器を下げてくれたりお世話になったそうです。
でも、うちの家族や親戚がお見舞いに来るとカーテンを閉めてしまうんだと。
毎日行く母ですらあまり顔を合わせないくらい。

ある日おばあちゃんが
「毎日うるさくしてゴメンね」
と言った事があるそうですがAさんは
「私が邪魔したらアカンから閉めてるだけや、気にしいな」
と言ったそうです。

話が長くなりましたが、”約束”と言うのは、Aさんが退院もしくは一時帰宅の際はうちに遊びにおいでと約束したらしいのです。
おばあちゃんが退院する日に看護師さんにメモ帳をもらい住所と簡単な地図を書いて渡したそうです。

そして私が金縛りにあったのは3日前でした。
おばあちゃんに金縛りの話をすると
「ああ、Aさん約束守ってくれたんやね。悪いことしたな、折角来てくれたのに」
と又涙ぐみました。

これはおばあちゃんには言いませんでしたが、
私はあの日おばあちゃんがいなくて良かったと思いました。

私に伝わった感情、あの耐え難い執着心はもしかしたらAさんはおばあちゃんを連れて逝きたかったんじゃないかと思うのです。

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