私は中途半端なこわがりです。
夜に一人でコンビニまでいくのも怖く、お化け屋敷にも入れないし、心霊スポット巡りなんて絶対に無理!
休みの日に自宅にいても、下手したら昼間でもふとした時に怖くなって外に出てしまう程。
そんな怖がりなのに何故かホラー映画を見たり怪談話を読むのが大好きという、自分でもほんとうに意味の解らない中途半端なこわがり。
といってもホラー映画は所詮作り物。
見てるだけでお化け屋敷のように目の前に出てきて驚かせるわけでもないので平気だし、怪談話も同じく。
寝る前や暇な時間に短編の怪談話を読んだりするのが大好きです。
そんな私がここ数年ハマっているのが、某動画サイトなどでおなじみの「怪談朗読」
お気に入りの読み手さんも出来て、パソコンをつけている時は大体再生していました。
基本的に作業用BGMとして活用していたので、じっくり集中して聞く。
という事はしませんでしたが、それでも今まで流していた物は大まかなストーリーなら話せる程度には聞いていました。
作業の合間に一部だけをじっくり聞いてしまい 「こっわ」「うわあぁぁ」「むりむりむり……」 そんな事を思いながらも、朗読をこわがりながらもおもしろく聞いていました。
上記の通り、基本的には作業用BGM。
耳を澄ませているわけでもないので、唐突に読み手さんが出す無機物のような声に驚いたりと、本当に失礼ながらしっかりとは聞いてはいませんでした。
そんな私ですが時々……本当に時々ですが、 咄嗟に「あ、これは聞いちゃいけないやつだ」そう思う時があってそっと動画を閉じていました。
それは何本かある話の中の一つだったり、まだ読み手さんが声を出す前の動画開始数秒後であったりとその日によってバラバラでした。
しかし中には例えば……夜の10時に聞いていて「ダメなやつだ」と動画を閉じても、休日の昼間に再生したら平気だったりとその日によって変わるので、 時間的問題なんかで無意識に拒絶していたのかな?と、あまり気にしていませんでした。
ある日の事。
家族は全員仕事や用事があり、家には休日の私ひとりきり。
特に面白いテレビもなく、なんとなくゲームでもしながら怪談朗読を聞こうかとスマホで動画を再生しました。
自動再生にしているので一本の動画が終わってもまた次の動画がはじまりそしてまた次の動画へ。
1時間ほどしてそろそろゲームも止めて買い物へでも行こうかとしていた時に、またあの感覚がありました。
「絶対にこれは聞いちゃいけない」
普段のようになんとなく「聞いちゃいけない」ではなく、「絶対に聞いちゃいけない」
突然の事ながら私は弾かれたようにスマホをつかみ動画を止めようとしました。
しかし恥ずかしながら……私は普段スマホは必要最低限しか使いません。
なので動画を閉じてもそのまま音声だけが流れる仕様に代わったことを知りませんでした。
自分では動画を消したつもりなのに流れつづける音声。
焦ってしまい中々消せないでいるところで、ついに朗読が始まってしまいました。
やばいやばいやばい!
頭の中では警報のように「聞いちゃダメ」「絶対にだめ」「今直ぐ消さなきゃ」と、とにかく聞いたらいけないという事しか考えられませんでした。
しかし焦れば焦る程上手く操作が出来ず……とにかく電源を切ればこの話は聞かなくてすむ。
そう考えて電源ボタンを強くおさえました。
その時です。
私は一階にいたのですが、ばたばたばたばたっ。と階段を誰かが駆け下りてくる音が聞こえました。
それは階段の上から中ほどまでの10段程で止まりましたが、決して聞き間違いではありません。
なんとか動画を止めることも出来ましたが決して安心は…… 。
階段は、私がいる部屋のすぐ隣。
おそるおそると覗いてみても、やはりというかそこには誰もいませんでした。
あの足音はなんだったのか…それは未だにわかりません。
流石にこの体験をしてから数週間は怪談朗読を聞く気にもなれず、 極力家に一人でいるのを避けるようにしていましたが、なんとなく「今日は平気だろう」と思った日に再び怪談朗読を再生しました。
その日は予想通り何事もなく動画を聞き終え、その次の日も平気でした。
こわい体験をした事などすっかり忘れていたころ、また「これは絶対にだめなやつだ」と思う動画が……。
この時はパソコンで聞いていたので、焦る事もなくすぐさま動画を閉じることが出来ました。
ほっとしながら気晴らしに何か明るい曲でもかけようか…そう思ったところで、私のすぐ後ろ。
本棚があるのですが、そこで何かを落としたような「ぽすんっ」という音が……。
思わず固まってしまいつつ、もしかしたらさっきしまった漫画の置き方が悪く、落ちたのかな?と恐る恐る振り向くもそこには何もありませんでした。
冷房がないと汗ばむほどの暑い日だったのに、一瞬で全身に冷や汗をかきました。
この後とくに何かあったわけではないのですが、兎に角恐ろしかったです。
きっと気のせいだったのだろうと自分に言い聞かせつつ、今、これを書いている間も朗読をつけています。
幸いな事に今回の朗読、内容は勿論怖いのですが本能的な恐怖を感じるものではありませんでした。
私はきっと、これからも怪談朗読を聞き続けていくのだと思います。