横断歩道

これは僕が高校一年生の時、学校への通学途中で体験したお話。

当時、同じ高校に通う近所の同級生二人と自転車で通学していたんだけど、その日もいつも通り僕の家の前で集合して学校へ向かった。

僕の家から学校までは結構距離があって自転車でも三十分は掛かるし、信号が結構多い。 三つくらい大きな道路があるんだけど、その最後。
三つ目の大きな道路を渡ってすぐ、短い横断歩道があるんだ。

その横断歩道以前は信号は無かったんだけど、僕らが高校に入学して数週間後に設置された。
それで、僕らがその横断歩道を渡ろうと思った時に信号が点滅して赤になった。

「最悪〜」 と友人のAが言った。
僕とBも同じような言葉を発したと思う。
信号を待っている間、僕は少しボーッとしていた。
AとBの会話が少し耳に入って来たが何を喋っていたかは分からない。
そして僕の左側面。

僕の視界にぼんやりと映る程度の黒いドレス(?)、女性が身に着けるような黒いワンピースのような、とにかく黒いヒラヒラとした物が僕の視界からスーッと前に進んだ。
僕は「青になったか」と思い自転車のブレーキから手を離し、ペダルを踏んだ。 「渡るの?」とAの声が聞こえた次の瞬間、
Bが「おい! 〇〇(名前)」と大声で叫んだ。

車のクラクションが鳴り響いて、僕の方へ黒いワンボックスカーが近付いてきた。咄嗟にブレーキを掛け、自転車をバック。
車の運転手は凄い眼光で僕を睨みつけていたけど、それより驚いたのは車が通り過ぎた瞬間信号の色が赤から青へと変わったことだ。

Aは「何やってんの」と心配そうに声をかけてくれた一方、
Bは多少憤りを見せていた。

僕は二人に謝罪をし、「誰かが渡ったから青になったと思って渡った」と、伝えた。 AもBもキョトンとして、Bが口を開けた。

「いや、まずさっきから俺達しかいなかったじゃん」

Aもそれを聞いて頷いていた。
その日は俺がボーッとしていたせいということで話は終わり、その後は何事もなく学校へ辿り着いた。

それから、友人Aの部活で朝練習が実施されるようになった事や、僕が委員会で朝早く行くことが増え、だんだんと三人で学校に行く習慣は無くなった。

今日もその通りを久しぶりに渡ったので、この話を思い出し、ここに書き込みました。

最後になりますが、その通りの周辺で何か事件でもあったのかインターネットで調べてみたら、その横断歩道のすぐ隣にある建物で飛び降り自殺があったらしい。

あの時との関連があるは今はもう分からないけど、
僕が一番見に危険を感じた出来事です。

朗読: 小麦。の朗読ちゃんねる

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