とあるホテルで

これは今年、東京のとあるホテルで体験した不思議な話です。

私と彼女は、東京都内で観光を終え、予約した新幹線が来るまでの間ラブホテルで休むことにしました。

観光で歩き疲れた事もあり、ショートタイムでの入室、そして仮眠をとることにしました。ホテルはよくあるビルタイプの建物で、部屋も特に気になるところはありませんでした。
ただ、部屋がエレベーターの目の前だったこともあり、エレベーターが上がり下がりをする音、ドアが開閉するときの機械音が僅かに聞こえる程度でした。

そこまで音が気にならなかった私たちは、ぐっすり寝入ってしまい、あっという間に退出の時間となりました。

荷物をまとめ、部屋を出ようと私が先にドアを開けると、私たちの部屋の前に、エレベーターを待っている1組のカップルが目に入りました。

右手に身長低めの女性、左手には170センチ後半はあるであろう男性が立っていました。
私がドアを開けた音に反応して、女性だけがこちらを振り返りました。
私と、その女性は一瞬目が合い、気まずさから女性はエレベーターの方に顔を戻し、私は「あっ、忘れ物したかも…」と言って1度ドアを閉めました。

後ろに立っていた彼女の横を通り抜け、ありもしない忘れ物を探すふりをし、「ごめん、ポケットにあったわー」と言いながら、再びドアの前に立ちました。

ドアを閉め、忘れ物を探すふりをして戻ってくるまで、1分程度だったと思います。エレベーターの音や、他の部屋のドアの開閉音は聞こえてはいませんでしたが、大丈夫だろうと思いドアを開けました。

すると、期待通り既にカップルの姿はありませんでした。
エレベーターに乗り込み、笑いながら彼女に「いや〜、さっきは気まずかったね」と言ったところ、彼女は不思議そうな顔をして「なんのこと?」と返しました。

私は事のあらましを全て話しましたが、初めにドアを開けたとき、私の斜め後ろにいた彼女は何も見えていなかったと言っていました。
さらに彼女は続けてこう言いました。

「エレベーターのボタン押したとき、待たずにドアが開いたってことは、エレベーターずっと私達のいる階に居たんだよ」

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