同居人

 私は怪談や心霊番組などが好きだ。
 だが、それを実際に信じているわけではなくあくまでエンターテイメントとして楽しんでいる。
 テレビから出てきて呪い殺す、運転中に現れて崖に誘うなど実際にあったらたまったもんじゃない。
 たがその一方で霊はやはり存在していると思うのだ。
 今回は私がそう感じたいくつかの体験をお話ししようと思う。
 少々長引くかもしれないが最後までお付き合い頂けると嬉しい。

 私が高2の夏、徹夜で勉強していた。というのも夏休み前の期末テスト期間の最中だったのだ。
 前々から勉強しようと思っていてもなかなか手に付かず、やはり今回もエナジードリンクなどに頼って徹夜することになっているのだ。
 まぁ、徹夜する羽目になるような人間なので勉強中もついついスマホをいじってしまう。
 たまに様子を見に来る母に喝を入れられることもしばしば……。
 というわけで自分の置かれた状況を顧みずに、スマホでYouTubeを観ていたところ突然、「ねぇ!!」と耳元で叫ばれた。
 慌ててイヤホンを外して振り返るも、そこには誰もいなかった。スマホの時計を見ると夜中の3時23分。
 明日も朝から仕事がある母が起きているはずがないのだ。当然、2つ下の妹も寝ている。
 なによりも、その耳元で叫んだ声はとても高く、幼い女の子の声だったのだ。
 正直、この現象は何度か体験している。
 高校受験のために夜中に勉強をしていた時も同じように「ねぇ!」と叫ばれた。久しぶりだったためかなり驚いたが……。
 しかしこれでは恐怖体験とは言えず、シンプルに謎でしかない。

 次に不思議な体験をしたのはその高2の冬のことだ。まぁその時も定期テストのために徹夜をしていた。
 しかし場所は自室ではなく一階のテーブルでだ。
 リビングとキッチンの間にあり、家族で食事をとるのに使っている。まぁよくある配置だと思う。
 その時私はリビング側を背にしてキッチンの方を向いて座っており、電気はテーブルの上の小さい電球だけ付けていた。
 その時は金欠でエナジードリンクを買うのを渋って勉強していた。
 だがやはり四時ごろに限界がきて、目覚ましのために風呂に入ろうと考え、着替えをとりにいこうと立ち上がりリビングの方は振り返った。
 その時それがいたのだ。
 リビングのソファーとテレビの間に挑発の黒髪に黒い服の女が膝をついてうなだれている。
 とっさに椅子に座りなおすも、どうすることもできず、うつ伏せになりお経を唱えた。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏…」
 気づくと朝になっていた。どうやら私は寝落ちしたようだったのだ。
 あの女の正体について考えた時、一つのことが思い浮かんだ。

 私の住んでいる家は父(浮気がバレてもう何年も離別中)の実家であり、父の姉、私からすると叔母は二人目の子を産んだ際になくなったということ。
 しかし、遺影やアルバムをみても肩までのショートヘアだったのだ。
 これが短い私の人生において初めて不可解なものを目にした出来事だ。
 では何故いまさらこんな話をしたかには理由がある。
 今私は浪人の末、なんとか有名大学に進学し大学生になった。
 浪人していたため母方の祖父祖母の一周忌や盆にも出れず、やっとの事で母の実家にきているのだが、そこに一通のラインが入ったのだ。
 それは小学校からの友人で「お前彼女できたのか!?」というものだった。
 当然、私には彼女はおらず、また唐突にそんなことを聞かれたため「なんで急にそんなこと聞くの?」と当然の質問をした。
 すると友人曰く、私の家の二階に髪の長い女の人が立っているというのだ。
 その日、私の家の小さな公園では盆踊りをやっており、階段あがってすぐ横にある窓から公園を見渡せるのだが、そこに女が立っていたのだそうだ。
 当然、私の家族は墓参りのために関東の家から母の実家の関西に行っているため、家に誰もいるはずがないのだ。

 この投稿をする数日前に家族で帰宅したとき、やはり家にはきちんと施錠がされており、荒らされた跡も当然なかった。
 この三つの体験からやはり霊はいると思う。
 私たちをすすんで恐怖に陥れたりするのではなく、ただそこに「いる」のだ。
 ただ私たちが見えてない、気付いてないだけなのだ。

朗読: りっきぃの夜話
朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

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