歩行器オバサン

これは、昔病院に入院していた時の話です。

私が小学校2年生の時、学校に行く途中に事故に巻き込まれ、
全治3ヶ月の怪我を負いました。
私は病院でいつも色んな人に、あだ名をつけてました。
「お爺ちゃんはいつもゲラゲラ笑っているから、ゲラ爺ね」や
「お姉ちゃんはタバコをよく吸ってるから、モクモク姉ちゃんだ」
と毎日のように遊んでいました。
そんな中いつも歩行器を押して歩いているオバサンがいて、
私は「歩行器オバサン」といつも呼んでました。

こうして1ヶ月の時が過ぎたある夜、
私は全く寝つけず ずっと起きていました。
そうするとどこからか カラカラカラ と音がしてきました。
私は一瞬ドキッとしましたが、すぐに音の正体が判りました。
あのオバサンが歩行器を押している音でした。
私は「トイレにでも行くのかな?」と思い、
扉の方を見るとうっすらとオバサンの影が見えました。
それからしばらくすると、ナースの人達が急に慌ただしくなり、
たくさんの人が走り回る音が聞こえてきました。

次の日 仲の良いナースさんに
「昨日何があったの?」と聞くと
「それがあの歩行器お婆さん昨日の夜急に亡くなったのよ」と言いました。
私は「そういえば、あの歩行器オバサン、昨日の夜トイレに行ったの見たよ」
と言うと
「それはおかしいわ、あのお婆さん1週間前からずっと寝たきりなのよ、
歩けるはずが無いわ」と言いました。
確かによく考えてみると、トイレに行くには必ず
ナースステーションを通らなければならず、
ナースさんが普通気づくはずだし、それにあのオバサンが、
トイレから戻って来るのを私は見ていませんでした。

私は何とか信じてもらおうと、
「いや、あれは絶体歩行器オバサンだよ、歩行器オバサンの影を見たもん」
と言うと、
「じゃあ寝たきりの人がどうやって歩くの?」
と聞かれ、私は何も言えなくなりました。

今よく考えると不思議な体験ですし、幽霊かと思うと背筋がゾッとします。

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