心霊スポットツアー【前編】

心霊現象は、怖くはあるが、起こったその時はさりげない。
なかなか文章では書ききれないので、まとめて投稿する事にした。  

それは、高校を卒業したばかり、10代も終わりに差し掛かった頃の事。  
この年齢になってくると周りの友人も自動車免許を取り始め、
まぁ、今時の若者って感じで、よく夜に出歩く様になった。  
ある日、いつものメンバーで集まっている時に、友人のYがこう提案してきた。
「俺の友達で一人キャバ嬢の子がいるんだけどさ、
その子がどうやら”視える”らしいんだよね、
ちょっと今度皆で心霊スポット巡りしてみねぇ?」  
私の友人関係でもよくそういうのが”視える”子がいたりするのだが、
仕事柄なのだろうか?
それはさておき、友人Yに私はこう返す。
「おー。いいんじゃん?俺ちょっと何ヶ所かピックアップしとくわ」
 自慢じゃないが私が住んでいる県は、
心霊スポットが数多く点在し、場所には事欠かない。
ローカルの人しか知らない場所、有名な場所も含めて、4ヶ所程取り上げた。

さて、いよいよ当日になって、件(くだん)の女の子も含めて
いつものメンバーで揃い、心霊スポットツアーへと出発した。
道中、紹介してもらった女の子、仮にA子としておこう。
こんな事を言った。
「Y君、憑かれやすい体質なのに大丈夫かな?教えてあげたのに・・・」
少しゾッとした。  

まずは有名なO池へと向かう。
池という名前がついているが、とても大きな池で、
そこらへんの公園の池とは訳が違う。
私個人の所見としては、湖と言っても差し支えない。
インターネット掲示板でも有名な心霊スポットである。
ろくに建物が立っていないため、あたりは暗闇。
駐車場に車を止めると、早速遊歩道に向かう。
すると、Yが足を止めた。
「あ、来るなって言ってる」  

遊歩道にも街頭は無く、道は見えない。その上場所は山の中だ。
闇が質量を持ったような、真っ黒な扉で塞いだような、そんな暗さがあった。
 A子に確認をとってみると、池をぐるりと囲む遊歩道、
更に山に囲まれているような場所だが、その遊歩道の山側に 無数の顔があり、
こちらを睨んでいるという。
「危ないから戻った方がいいよ」
 霊を信じない友人(Tとしておく)は場が白けたせいか文句を言っていたが、
正直私は胸を撫で下ろしていた。
早々にO池を撤収し、次へ向かう。  

Kホテル
ここはまぁ、元々俗に言うラブホだったが、
利用者カップルの男性の方が彼女を絞殺してしまったらしい。
廃墟になった当時も、もう一組、殺人があったそうだ。
ここもO池と同様、心霊スポットとして有名だったが
何も起こらなかったので割愛する。

N病院
ここは閑静な住宅街の真ん中にあるローカルな心霊スポットで、
3年間で3件の病院テナントが入り、なぜか軒並み廃業しているという。
車から降り、外観を観察。
なんてことはない、廃病院ではあるが廃墟というほど荒廃しているわけでもないし、あまり怖くない、というのが第一印象
うーん、なんか拍子抜けだな、と外から眺めていると。
Yが急に2階の廊下を指指して
「おい、見てみろよあれ・・・看護婦」
え?と2階に目をやっても、誰もいない。
同時にA子も 「ほんとだ・・・まだ働いてる」  
どうやらその病院の2階の廊下で、看護婦が車椅子を押して歩いているらしい。
幽霊を信じない友人Tは、 嘘ついてんじゃねーよと二人を茶化すが、
二人はずっと2階を凝視したまま動かない。
そこで私が「そろそろ次行くか」と皆を促し、目を落とすと。  

いた。1階廊下のいくつかある窓の内の1枚が少し開いていて。
その窓の開いた部分だけを白いワンピースの女性が、スッ・・・と横切った。
その先は窓枠だから、本当なら窓の内側に女性の存在を確認できなければおかしいのだが、
ほんとにそこだけ、僅かに開いたところだけを、女性が通ったのがわかった。
思わず私は声を漏らした。
「おい・・・皆今の見た・・・?」  
自分だけが見た、という事になればまぁ、気にせいにできるわけだけど。  
全員見ていた。白いワンピースの女が横切ったところを。
さっき2人を茶化していたTですら同じものを見ていた。

最後に病院をバックに皆で集合写真を録ったところ、
Tの顔だけ、赤黒く変色していた。

私にとって、これが初めての心霊体験となった。 (後編に続く)

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