心霊スポットツアー【後編】

さて、地元で有名なN病院を後にし、隣のS市へと移動する。
山の中にあり、城跡だそうで、
春には満開の桜が魅力の観光スポットとして有名だ。
公園の真ん中に”戦時中の処刑台”と呼ばれる階段のみの場所があり、
そこに旧日本軍の霊が出るだとかなんだとか・・・。

駐車場に車を止め、車を降りて、”処刑台”へ向かう。
公園へ向かうためには、両側を深い林に囲まれた階段を下らねばならず、
もちろん夜なので真っ暗。
懐中電灯の頼りない明かりで、公園へと下っていく。
A子「ねぇ、ここ怖いよ・・・両側からたくさんの顔がこっちを見てる」
Y「そうだよね、たくさんいるよね」
私は霊は見えないが、なんとなく両側の林に意識を移してみると、
確かに人の視線のようなものを感じる。
が、夜な上に山の中、目的が心霊なんだから、
怖い雰囲気はあって当たり前だよな、と 呑気にそんな事を思っていた。

公園に到着し、”処刑台”へ向かう一同 “処刑台”は、
公園の開けた場所にポツンと建っている。
まぁ、広い公園の真ん中に建っているだけあって、怖くはない。
A子曰く、「処刑台は問題ない」との事。
何も感じないし、霊もいなかったって。
本当に怖いのはここじゃなくて・・・とA子が教えてくれたのが、
“処刑台”を取り囲む様なこの林。
木の陰が真っ黒な闇になっていて、木々の隙間を縫うようにして
白い着物の女性が 出たり消えたりしているそうだ。
ほんとに近寄っちゃいけないらしい。

後、本当に問題なのは池。
ここS城址公園は比較的大きな池があり、
その昔、家老の娘をおもりしていたお婆さんが、
誤って池に娘を沈めてしまい、 困り果てて自分も入水して亡くなった、
という逸話がある事でも有名だ。
霊は水場に寄って来る、という話もよくあるし、まぁ池が危ないっていうのは理解できた。

それじゃぁまぁ怖いしそろそろ帰るか、と提案しようとすると、
ここに来て霊を信じないB 「んじゃ池の遊歩道を一周して帰ろうぜ!」 と、
一人池の方向へ歩いていった。
嫌がるA子とYをなだめて、後から着いていく私達
まぁ、暗闇は本当に怖かったし、刺すような視線を感じたが、
特に問題なく一周できた。

さて帰ろうかと駐車場へ続く階段へ向かう。
すっかり狼狽したA子
A子「ねぇほんとにもう怖いよ」
「あ た し も」
先頭にB、その後ろに私、A子、Yと続いて歩いてるわけだが、
Bと私の間の何もない空中から くぐもった、女の声が聴こえた。
A子「ほらもう来てるよ、憑いてこようとしてる」
もうさっさと帰ろう、と恐怖感でいっぱいになりがら階段を登っていく一同。
と、階段の途中で、Yが急に 「走れ!!!!!!!」と叫んだ。
何もわからないなりに、無我夢中で走り出す。
やっとの思いで駐車場に戻ってから訳を聞くと
真っ暗な階段を登っている途中、一度公園の方を振り返ったんだって。
そしたら目の前に顔面が半分崩れた、女の生首があったそうだ。
これはまずいと感じたYが、大きな声を出したとの事。
A子「その人、さっきの声の人だと思う・・・。
今はね、M君(私の事)の後ろにいる、一緒に行きたいんだって・・・。」
おいおいほんとかよ。彼女いるぞ私。
冷や汗が一気に吹きだしつつも、なんとかはぐらかそうとする私。
A子「この人はほんとに危ないから、あたしがなんとか出来るから、持って帰ってあげる。 でも他の人は問題ないから安心してね。」
ほかのひと? どうやら話を聞くと、私は所謂霊媒体質と言うか、
霊に憑かれやすい、入られやすいそうで。 その女の人の他に赤子の霊が3人、
男性1人、乗っけてしまっているらしい。
まぁ怖いけど、害がないならまぁいいか、と車に乗り込んで帰路へつく。

後部座席にYと私、運転はB、横にA子。
ここで身体に違和感を覚える私。 身体が異常に重い。
確かに朝ももう近かったが、眠くはなかった。
俗に言うけだるい、という表現が一番合っているが。
それのひどい版。あれ?血の気も引いて、貧血とよく似た症状になってきたぞ・・・。
後部座席でうずくまってしまった。
横を見ると Yも同じようにうずくまっている。
私「おいY、なんかだるくねぇ?」
Y「あー、うん。だるいね。っていうか言ってなかったけど、
N病院から一人、憑いてきてる。怒ってるよ。 そのせいだ。」
どうやらYによると、心霊スポットに踏み込んだ事で、
怒った霊がずっと憑いてきていたらしい。
一度N病院に戻って非礼を詫びないと、この後ちょっと大変だぞ、
とも言っていた。

S城址ではあまりに霊の数が多くて気づかなかったんだって。
B「えー?俺戻るのめんどいよ、もう眠いもん」
ごねるBを説得して、もう薄明るくなったN病院にまた向かう。
そこで二人で、踏み入って申し訳ありませんでした、ご迷惑をおかけしました。と土下座して謝った途端、 嘘のように身体のけだるさが取れた。
どうやら許してくれたようだ。
怪談は好きでよく見る演出ではあったが、
まさか実際に自分が体験するとは思わなかった。

ほっと一安心してBに家まで送ってもらい、
自室に着くと一気に眠気が来て 昼まで寝てしまった。
思ったより体力を消耗してしまっていたようだ。

さて、後日談ではあるがその日の夜の事である。
当時付き合っていた彼女から電話が来て、少し話をしていると、
こんな事を言われた。
「ねぇ、なんか電話の後ろで女の人の声がするけど、誰かいるの?」
これはまた、別のお話。

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