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廃屋

これは私が大学3年生の夏に起きた出来事です。

その日はサークル仲間のA、Bと共に、茨城県にある、とある廃屋に肝試しに行きました。

現在では住み手が見つからず廃屋になっているその家ですが、昔はそこに家庭環境円満な家族四人が住んでいたそうなんです。

いつからかその家には誰も住まなくなり、「惨殺死体が発見された」とか「その家で呪いの儀式が行われた」などの噂が立つようになりました。

その噂の影響で現在その家は心霊スポットと化し、山の麓にひっそりと佇むその廃屋は、夜でも多くの肝試しファンが無断で寄り付く場所となってしまっているのです。

今回その噂を聞きつけたAが私とBを誘い、Bの車でその廃屋へと向かうことになりました。

メンバーは私とAとBの計三人。

時刻は深夜1時過ぎ。

国道を抜け、舗装されていない道路をグラグラと揺れる車で通過していきます。あたりは人気が全く無い田舎道。街灯も少なく、ポツポツと点灯しているだけでかなり暗く、雰囲気が怖かったのを記憶しています。

その空気に圧倒された私たちは、暗くなった車内を盛り上げようと、しりとりなどのゲームを始めますがどれも盛り上がらず、淡々と時間と距離だけが通過されて行きました。

…いつ頃だったでしょうか。

気づけば廃屋の前に着いていたんです。

それは突然暗闇からスッと現れ、ズズズ…と不気味なオーラを醸し出していました。

流石に噂になるほどの廃屋。

今まで行ってきたどの心霊スポットとも見た目が違いました。一言で表すなら”邪悪”でしょうか。

2階建ての家に蔦が絡みつき、それはまるで血管のようで、鼓動をドクドクと立てる生き物のように見えました。

その暗闇に現れた異質な”生き物”を、私たちはただただ無言で車の中から眺めていました。

数分経った頃にAが

「…おい」

と言い、私とBは我に帰りました。

いそいそと車から出て、持ってきた懐中電灯を一人一つ持ち、廃屋の正面へと立ちました。

懐中電灯を点けました。

正面玄関のガラスは割られ、中のキッチンが見えます。

窓は一つか二つあるのでしょうが、蔦が絡まっており、よく見えません。

「この家で惨殺死体が見つかったのは本当らしい。ほら、噂によるとそこ!強盗に襲われた奥さんがその二階の窓から身を乗り出し、助けを求めようとした所で包丁で刺され、息絶えてしまったらしいよ。遺体が発見された当初、奥さんは窓から上半身を出し、髪がだらんと垂れ下がって、その髪の間から見える目は酷く充血し、口を大きく開けていた。この女性がこの世に対する未練があり、実際に幽霊となって現れる傾向が高い…ふむふむ…なるほどなぁ…」

Aがスマホで心霊スポットを紹介するサイトを表示し、画面をスクロールしながら、淡々と廃屋についてを語って行きます。

私とBは段々と気持ち悪くなり、「おいやめろよ…めっちゃ怖えじゃん…」と言うと、Aはハッと我に返ったのか、「あぁ!いやぁごめんごめん!!ちょっと興奮してたわ」と、スマホをササッとスボンのポケットにしまうと、「じゃあ行こうか」と懐中電灯を正面玄関に向けて言いました。

「…お邪魔しまぁす」と虚空に言い放ちながら玄関をくぐると、家の内装がよく見えてきました。

家族で使っていたであろうテーブル、キッチン。リビングには古びたテレビが置かれ、その上には招き猫の置物が置いてあります。誰が着ていたのか分かりませんが、床には服が散乱しており、近くにはチラシや新聞も湿った状態で置かれていました。部屋も何個かあり、閉まっているドアと開いているドアがありました。

実際に誰かが住んでいたであろう光景とそれが壊れてしまった現状を目の当たりにすると、やはりなんとも言えない気持ちになりました。

それと同時に、誰かの視線をチラホラと、懐中電灯の隙間を掻い潜って感じるのです。暗闇の奥からジーっとこちらを見てくる気配が。

それは4人の視線。微動だにせず、ただジーっとこちらを凝視してきている。それは怒りにも悲しみにも、何か興味を示すようにも…そんな視線を感じました。

きっとAとBもそれを感じたのでしょう。ギクリと動きが悪くなり、息が重くなります。罰が悪くなったAが「おい…もうさっさと問題の2階の窓のあたり調べて帰るか…」と言いました。私とBは無言でうなづき、そろーっと二階へ。

ギシギシと軋む床を踏みながら、リビングを通過し、トイレ横の階段を私が先頭となってギィ…ギィ…ギィ…と上がって行きます。

その時です。

階段の上から強烈な視線を感じ、そちらにバッと懐中電灯を向けました。

光に照らされた先に、フッと何かが通過していくのが分かりました。

女性でしょうか…?髪が長く白い服装をした何かが確かに光の中を通過したのです。

ボロボロの服に血だらけの顔、明らかにこちらを睨みながら口をパクパクさせ、ゆっくりスーッと左を通過していきました。

「おい…。おい!どうしたんだよ!!」

Aが固まっていた私に声をかけます。我に返った私は「あぁ…ごめん。階段がよく見えなくてさ…」と言い、きっと見間違いだと思いながら階段を上りきりました。現に他の二人はそれを見なかったらしいですし。

階段を上った先に右と左に部屋が一つづつありました。先ほどの女性が行ったのは左の部屋。見間違いだとは思いつつも、私は左の部屋に行くのが怖かったので、右の部屋に行く事にしました。AとBも私の後ろについて団子状態で連なり、部屋に入る事に。

ドアを開けるとそこは…何もありませんでした。

一面白い壁で何も置かれて無く、窓もありませんでした。何に使っていた部屋だったのでしょう。それとも何にも使っていなかったのか。

考えているとBが「なんだこの部屋…なんもねえな」と言いました。するとAが「じゃあ窓があるのは左の部屋か…」と言います。

「先ほど女性が通過したのは左…つまり左の部屋に何かあるのか…」嫌な予感がしましたが、今度はAが先頭となり私は最後尾で左の部屋へと入っていきました。

ドアをガチャリと開け部屋に入るA。それに続くB。私も部屋に入ろうとし、懐中電灯でドア前を照らしました。

すると目の前に女性が立っていたのです。

私の顔数センチ前。私と同じくらいの身長のその女性は怒りにも悲しみにも近い表情で私を睨んでいました。口を先ほどと同じリズムでパクパク動かしながら、ズーっと私の目を見ています。人間本驚くと一言も声が出ないと言いますが、あれは本当でした。声が全く出ないのです。

「おい!大丈夫か!? おい!!!」

AとBの声に応える事が出来ないまま息が乱れ、目はぐるりとし、目の前がさらに真っ暗になっていき

私はその場に倒れてしまいました。

…気がつくと私は車の中に居ました。

Bの車の中のようです。

舗装されていない道路を運転しているのか、車内はガタガタと揺れています。

「お!!起きたか!! いやぁびっくりしたよ! 心霊スポット情報を話してたら突然白眼になって口パクパクさせながら気絶するんだもんなぁ!!?」

AがBに言います。

「いやー病院行こうかと思って引き返そうと思ったんだけど、良かった~無事で!」

Bが言います。

窓の外には見たことのある道が。

街灯がポツポツと並び、正面には山が見えていました。

「なぁ…これどこ向かってるんだ?」

「どこって、いや今日あの廃屋行くって行っただろ?」

「え?いや!さっき行ったじゃないか!!そこで俺は倒れて…」

「何言ってんだよ!来るのは初めてだし、お前が一番今日を楽しみにしてただろ?」

「いやそんn…」

「着いたぞ」

「すげえ所だな…」

見ると、先ほど来たはずの廃屋が目の前にありました。

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