可愛さ余って

この話は私の母から、聞いた話です。

母は昔ホステスとして働き、父は同じ店の黒服という立場で働いていたそうです。
父は当時大学生、母は父よりも7つ上でした。
若いながらも気がきき、しっかりして、お客さんにも店長からも信頼を得ていた父。
そんな姿を見て年上であったにもかかわらず、
母は惹かれてやがて付き合うことになりました。
すぐに同棲がはじまり、二人でアパートに住むことになりました。

当時、父は大学生でしたので、昼間は大学に通っていたようですが、
当時父はなかなかのイケメンだったようで、女性からもモテていたようです。
そんな父に対して母はやきもちをやき、
とうとう、父は大学中退ということになってしまったのでした。
当然、父の両親は大激怒。教員免許をとらせたかった父の母、
私からみれはば祖母は、水商売の年上女にたぶらかされたとして、
母を目の敵にするようになったようです。
ちょうど、私を身篭った時期でもあったようなので、
どちらにしても、働かなくてはいけない状況でもあり、
父も大学中退は仕方なかったと納得してはいたと思います。
ただ、祖母は息子の人生を狂わされたと思ったんだと思います。

そのような事があったある日、アパートで両親が寝ていると
毎晩のように金縛にかかるようになったそうです。
また、洗面所にいると、鏡に白いものがすっと横切ったりと
妙な事が起きるようになりました。
あまりに、立て続けにあるので、両親はお寺に相談にいきました。
すると、そのお寺の住職さんは霊感のある方でした。
住職さんは、
『二人の仲を裂かせようと一生懸命拝んでいる人がいる。
大変恨みの念が強くて、それによって、怪奇現象がひきおこされています』
と言ったそうです。
母はすぐにピンときたようです。
そうです。父の母です。
最近新しいお仏壇を買ったようで、熱心に拝んでいると聞いていました。
母はそこまで、私は恨まれていたのかと愕然としたそうです。
住職さんは、
『あなた方二人の写真をください。
これを使って私はこれから、あなた方二人の為に祈ります。
ですから、けして負けないでください』
そして、二人は住職さんに写真を渡したそうです。
ほどなくして、両親に怪奇現象は起こらなくなりました。

それから、20数年後、私のいとこが当時16歳と言う若さで自殺しました。
その従兄弟は父の妹の子で、祖母が一番可愛がっていた孫でした。
次に、父の弟が交通事故あい、片腕を失ってしまいました。
また、祖父母が経営していたアパートも潰れてしまいました。
祖父母にとって、不幸な事が立て続けに起きていました。
そして、祖母の最期は末期卵巣癌で痛みに悶え苦しみながら、亡くなりました。

……私、思うんです。
よく、言うじゃないですか。人を呪わば穴二つ……。
まさにそれなんじゃないかなって。
祖母も息子可愛さに恨んでしまったんだろうけど、
その恨みの代償はあまりに大きかったと思います。
私にとって祖母はそんな人にはみえなかったけど、
裏の顔はちがったのでしょう。
生きてる人間はやっぱり怖いなと思った話でした。

朗読: ゲーデルの不完全ラジオ

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