私は説明があまり得意では無いので、
所々、分かりにくいところや、急に話が変わってしまう所などがあるかもしれません。 ご了承ください。
私が小学生の時、夏休みなどの長期休みは決まって、
田舎に住はるんでいる祖父母の家に遊びに行きました。
当時、祖父母の家に遊びに行くことは、私にとって、楽しみの一つでした。
自分で言うのもなんですが、祖父母は、私のことを溺愛しており、
遊びに行った際は、ご馳走を振舞ってくれたり、
おもちゃやお菓子などをたくさん買ってくれたりなど、とにかく甘やかされました。
なので、私がなにか悪さをしても、大抵の事は許してくれ、
ちょっとやり過ぎてしまっても、「もうやっちゃダメだよ?」と少し注意するだけでした。
今思えば、とてつもなく甘やかされていたのですが、その時の私は、少し……
いや、とてもバカだったため、全く懲りずに、悪さを続けていました。
私自身、祖父母に甘えていたのだと思います。
と言うのも、私は母と二人で暮らしており、
若くして私を産んだ母は、生活費や、私の学費などを稼ぐため、ほぼ休みなく働いていました。
そのため、帰ってきても、疲れてイライラしていたり、
休みの日には、ほぼ布団の中にいたりなど、あまり親子の時間を持てない状況でした。
なので、たくさん話したり、遊んでくれたりする祖父母は、
私にとって、唯一、たっぷりと愛情を注ぎ、甘やかしてくれる存在でした。
私は、祖父母も、祖父母の家も大好きで、長期休みが本当に待ち遠しかったのを覚えています。
……前置きが長くなってしまい、すみません。
今からするのは、夏休みの、ある蒸し暑い夜の話です。
祖父母のはとっくに寝てしまい、時刻も、あと少しで深夜の二時を回ろうとしていました。
小さく音楽を流し、布団でゴロゴロとマンガを読んで、夜更かしを楽しんでいるときでした。
突然、廊下の方から、ギシ…ギシ…ギシ…と、足音が聞こえてきました。
私は、反射的に音楽を止め、電気を消し、布団に潜り込みました。
ドアの向こうの状況を読み取ろうと、息をひそめ、聞き耳を立てていると、
足音がゆっくり遠ざかっていくのが分かりました。
完全に音がしなくなったのを確認すると、電気をつけ、音楽を流し、さっき読んでいたページを開きました。
何事もなく、三十分くらい経った時、再び、ギシ…ギシ…ギシ…と足音が聞こえてきました。
しかも、音はさっきよりも、私の部屋に近づいて来ていました。
さっきと同じように、全てを消し、布団に潜り、耳をすましながら、足音が消えるまでじっとしていました。
何も聞こえなくなったのを確認すると、布団から出て、次は、電気だけをつけて、マンガを読み始めました。
もしかしたら、音楽が音漏れしてしまっていたのかも、と考えたからです。
部屋には、ページをめくる音と、外からの、カエルや虫の鳴き声だけが響いていました。
その時には、すでに三時を越していて、じんわりと眠気が来ていました。
私は、「もう寝よう」と思い、マンガを閉じ、電気を消そうとした時でした。
ギシ…ギシ…ギシ…ギシ… またあの足音です。
音楽も消し、大きな音を立てた訳でもないのに、また、足音が聞こえてきたのです。
そこまで来ると、少し不気味に思い、すぐ電気を消して、音を立てないよう、静かに布団へ入りました。
布団の温もりが体を包んだ瞬間、眠気がより一層強くなりました。
まぶたがだんだん重くなり、意識が遠のいていくなか、
足音は、今までよりもさらに近くへ……いやむしろ、私の部屋の目の前まで来ていました。
コンコン。
突然、ノックをする音が聞こえました。
私は驚き、少し眠気が覚めてしまいました。
それこそ最初は、祖父母のどちらかが、私が寝たかどうか、確認しに来てるんだと思っていましたが、
ここまで来ると、さすがにおかしいと思い、不気味さから恐怖に変わっていくのが分かりました。
心臓はバクバクと鳴り、体には、じんわりと冷や汗が滲んできていました。
ムシムシとした暑さで、布団から足を出そうかとも考えたが、状況が状況なので、そんな勇気も出ませんでした。
暑さをガマンして、再び来た眠気に身を任せていると、
また、 コンコンコンコン。 と、さっきよりも少し多めにノックをされました。
また、眠気を覚めさせられて、不気味とか、恐怖とかよりも、
「ああ、もう……またか。」と、いう、軽いイラつきが出てきていました。
その後、ウトウトとしていたら、ノックをされる。
静かになって、またウトウトしてきたら、やっぱりノックされる、というのを何回も続けられ、
だんだんイラつきから、怒りへと変わりました。
「誰だか分からないけど、本当にやめてよ! もう寝るんだから、静かにしてよ!」
と、心の中で叫びました。
しかし、それも届かず、ノックは何回も何回も何回も何回も続けられました。
もういっその事、ドアを開けてひっぱたいてやろうか。と思い、
布団から出ようとした瞬間、ドアの向こうから、声が聞こえてきました。
「ねえ……寝てる?……本当に寝てるの?」
知らない女の人の声でした。
さっきの怒りはどこへやら。
いよいよ私は、眠気とか、怒りなんてどうでも良くなり、恐怖だけが体を包みました。
息が荒くなり、冷や汗がドッと体からふきだし、
泣き出したい気持ちをグッとこらえ、とにかく寝たフリを続けました。
しかし、ドアの向こうの女の人は、ずっと、ノックや、
「寝てるの?起きてるの?ねえ?ねえ?」と半笑い気味に話しかけてきました。
私は心の中で、「お願い!眠くなって!早く朝になって!お願いっ!!」と懇願していました。
しかし、焦りのせいで全然眠くならないし、
女の人が「開けるよ?開けるよ?開けるよ?」と、狂ったように聞いてきて、
ドアノブをガチャガチャと鳴らしてきたので、
「ああ、もうダメだ。女の人が入ってくる。」と、諦めていたら、いきなりフッと意識が遠くなりました。
本当に急でした。
眠気とはちょっと違う、ほぼ、気を失う感じでした。
体の力が抜け、目の前が暗くなっていく中、 ガチャッと、ドアが開く音がしました。
重いまぶたの間から、ドアの方を見ると、
開いたドアに、足のない、白いワンピースを着た、背の高い女の人がたっていました。
とうとうまぶたが閉じ、意識が遠のいていくなか、最後に頭の上から女の人の声が聞こえてきました。
「なんだ。起きてたんじゃない。」
その瞬間、いきなり目の前が明るくなり、思わず、目を開きました。
外が明るくなっていることに気づき、体をムクリとおこして、周りを見渡しました。
ドアの方を見ると、女の人はいなくなっており、ドアも、開いていませんでした。
廊下からは、テレビ音と、朝食を作る音が聞こえており、祖父母が起きてきたことが分かりました。
私は、キッチンへ向かい、祖父母に「おはよう」と挨拶をすると、
いつもみたいに優しい笑顔で挨拶を返してくれました。
その笑顔に安堵し、いつもの定位置に座り、朝食を待ちました。
(きっと、怖い夢を見たんだ。少しリアルだったけど…。)
私はそう思いました。
もう忘れようと思い、テレビに目を向けると、急に祖母が、
「あっ」と言い、私に声をかけてきました。
祖母 「そういえば、昨日の夜中何してたの? ちょっと騒がしかったけど……。 体調でも悪かったの?」
心臓が飛び上がった。
私 「い、いや、何もしてなかったけど…。 どうして?」
祖母 「いやね、昨日の夜中、あなたの部屋の方から、ずっと足音が聞こえてたのよ。
私は、てっきり、トイレに行ってたんだと思ったんだけれど……。違うの?」
私 「い、いいや?トイレになんて行ってないよ。それよりもさ、他にはなにか音はした?」
祖母 「ほかに?んーっとね…。
……………………あっ!そうそう。あなたの寝言が聞こえてたわよ。」
祖母は笑いながらそう言いました。
私 「寝言?どんなこと言ってたの?」
祖母 「さあ……。そこまでは分からないわ…。 ただ、なにかブツブツ言ってたのは覚えてる。
……………………………あ、ひとつ思い出した。」
祖母は、手をぱんっと叩きました。
私は、「な、何?なんて…………言ってたの?」 と聞くと、
祖母 「えっとね。確か、「なんだ。起きてたんじゃない。」って言ってたわ。寝てるのにねぇ?あはははは。」
頭が、冷水を被ったように、サーっと冷たくなっていくのを感じました。
(夢じゃなかった。女の人は本当に来てたんだ。
本当に……………………私の部屋に入ってきたんだ。)
私の顔が恐怖で引きつり、全身がガタガタと震えていることに気づいたのか、
祖母は、「えっ!?どうしたの!大丈夫!?」と声をかけてくれました。
私は、昨日あったことを二人に話しましたが、二人とも、
「そんなこと今まで一回もなかった。そんな女性も知らない。」と、
べつに何かを隠す様子もなく、怪訝そうな顔で話を聞いていました。
話終わったあと、二人が真剣に聞いてくれたおかげで、少しだけ心が軽くなったので、
「ま、まあ、夢かもしれないけどね?!朝からごめんね!」
と、笑いながら言いました。
二人は、まだ心配そうな顔をしていましたが、優しく笑って朝食や飲み物を出してくれました。
その後、祖父がお寺から、小さな、可愛らしいお守りを買ってきてくれて、
「まあ念の為だ。持っとけ。」と渡してくれました。
私はお守りとかを付けるのが、あんまり好きではなかったのですが、
それを考慮してか、本当に可愛い見た目のお守りでした。
私は、そのお守りを肌身離さず持っておき、寝る時も枕元に置いて、布団に入っていました。
そのおかげか、それ以降、女の人が、私のところに来ることはなく、
そのまま夏休みを終えました。
話はこれで終わりです。
あれから10年近く経ちましたが、本当に何も起きていません。
ちなみに、そのお守りは未だに持っています。
もらった時よりも、色は黒ずみ、糸がほつれ、見た目は不格好になっていますが、
持っておかないと不安になってしまうので、さすがに洗うことはしませんが、慣れない裁縫で、チクチクと縫い、
落とさないように、定期的に留め具を換えたりなど、
大雑把で、飽き性な私にしては、信じられないくらいお守りを大切にしていました。
何となく、厄除などの、お寺に関係ある行事があった時は、必ずお守りを握って、参加していました。
たぶん、全然関係はないと思うけど……笑
お守りを持ってから、心霊とは完璧に無縁になりましたが、
夜、どこかから足音がしたら、お守りを握って、心の中でお経を唱えるようになりましたし、
夜更かしなんて、絶対にしませんでした。 というか、したくありません。本当に。
でも、今思えば、あの女の人、どこかで見たことがあるような気もするんです。
確か、曾祖母のアルバムに載ってた人にそっくりだった気も……。
いや、考えたくないです。
足音も、ドアの音も、トラウマで思い出したくない。
暗い中でうっすらと見えた、あの引きつった笑顔も。
1件のコメント
誤字が多くてごめんなさい……😭