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開かずの下駄箱

中学の三年に上がった新学期の最初の登校日。

Aは下駄箱の前で困惑していた。
下駄箱の割当は出席番号順、その自分の出席番号の下駄箱に錠前が掛かっていたからだ。
錠前は四桁のダイヤルロック式。
手にとって見るがしっかり掛かっていて、数字を適当に回しても開きそうにない。
困ったAだったが、とりあえず自分の靴は空いている下駄箱に収めた。

「先生。僕の下駄箱、なんか鍵が掛かってて使えないんですけど?」
「ああ、A。お前があの下駄箱か……。靴はどうした?」
「えっと、適当に開いている下駄箱をつかいました……」
「そっか。んじゃ、そのままその下駄箱を使ってくれ」
「えっ。いや、まあいいですけど……あの鍵はなんなんですか?」
「……気にするな。前に誰かが掛けたまま学校に来なくなったんで開けられなくなったんだよ」
「えぇ、なんですかそれ……」  
気にするなと言われても、気味の悪さを感じるA。
「そんななもん、簡単に開けられるだろ」  
Bに話すとBはこんなことを言い出した。
「いや、他の下駄箱使うから困らないし、開ける必要ないよ」
「中になにが入っているか気にんねぇ?」
「下駄箱に下駄、というか履物じゃなくて何が入ってるんだよ?」
「履物しか入ってないならなんで鍵なんて掛けるんだよ?」
「さぁ。ろくな気がしない。気味悪いしほっときゃいいだろ」
「なにビビってんだよ。開けてみようぜ」
「……」  
乗り気がしないA。
そこに聞き耳を立てていた女子、Cが口を挟む。
「アレはだめよ。開けちゃダメ……」
「どうして?」
「C、お前なにか知ってんの?」  
少し躊躇いを見せたあとに口を開くC。
「何年か前に自殺しちゃった子の下駄箱なんだって、アレ……」
「マジで?」
「なんで鍵を?」
「わかんない。でもその子いじめられていたらしくて、
下駄箱にいたずらされてたとか、そういうのがあったんじゃないかな」
「で、中には何が?」
「知らないわよ、そこまで」
「じゃあやっぱり開けてみようぜ」
「0、2、2……あともう一桁だ……」  
放課後、慎重に錠に耳を傾けてダイヤルを合わせるB。やけに手慣れている。
成り行き状、立ち会っているAだができれば居合わせたくなかった。

「4! よし開いた、0・2・2・4だ」  
解された錠をAに投げ渡すB。
「ん? なんだよ、上履きが入っているだけじゃんか。あー、D? 誰だDって? まいっか」  
下駄箱に入っていた、Dと名前の書かれた上履きを取り出して投げ捨てるB。
「ほらA、使えよ。お前の下駄箱だろ」
「あ、ああ」  
Aは開けられた下駄箱に自分の上履きを入れようとするが
「やっぱやめとく……」
「はぁ? なんでせっかく開けてやったのによ」
「頼んでないだろ……」
「あっそ。んじゃ勝手にしろよ、じゃあな」  
Bが帰った後、AはDの上履きを下駄箱の中に戻して再び錠を掛ける。
そして手を合わせる。何故かそうせずにはいられなかった。  

翌日の朝。
Aが登校すると件の下駄箱は昨日と変わらず錠が掛かったまま、
そしてもう一つ別の下駄箱にも新たに錠が掛けられていた。
Aは訝しみつつも、自分の靴を昨日と同じ開いていた下駄箱に収める。
「なんだよ、これ?」  
声がして振り返ると、Bが新たに掛けられていた錠を開けようとしている。
掛けられていたのはBの下駄箱だった。
「A、これやったのお前?」
「そんなわけないだろ」
「だよな。くそっ! 誰だよこんなくだらねえイタズラ」  
ぶつぶつ言いながらダイヤルを合わせようとするB。
「0、4、2……、1だ! 舐めんな馬鹿野郎が」  
開けた錠を投げ捨てるB。  

翌日からBは学校に来なくなった。
携帯を掛けても繋がらない。
二日目には担任が、Bが一昨日から家に帰っていない事が告げられ、
誰か事情を知っているものがいないか生徒たちに聞いた。
さらに翌日、Bの家族が警察に捜索願いを出した。  

そして一週間ほど経った日、Bが見つかった、学校近くの山林で遺体となって。
首を括った姿で。
「A、Bはあの下駄箱を開けたんだな?」  
担任がAに訊く。
「は、はい……」
「あの下駄箱、今は閉まっているが……」
「僕がすぐにもとに戻しました」
「それでいい。いいか、もう二度と開けるんじゃないぞ」
「やっぱり、Bはアレを開けたから死んだんですか? 誰なんですかDって?」
「……。Dは、お前たちの先輩だった。後は、自分で調べてみろ」

Dについて調べてみると、Dは確かにAたちの学校の数年前の先輩だった。
DはBが見つかったのと同じ場所で、同じく首吊り死体となって発見されていた。
Bが遺体で発見されたのは4月21日、
そしてDが遺体で発見されたのは2月24日だった。

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