未来が聞こえる廃墟

友人から数年前に聞いた話です。
ちょっと変わってるな、と思ったので投降しようと思います。

友人はいわゆるホラースポットマニア、というかそういう場所が好きな人間です。
なので、旅行に行く時にはわざわざそういうところに寄って行ったりするような人でした。
私はあまりそういう場所が好きではなく、ついて行ったことは無いのですが、
彼女の話によればもう30ヵ所以上は行っている、とのことです。

そんな彼女が珍しく私に「ちょっと聞いて!」とわざわざ電話をかけてくるほど、興奮している時がありました。
それはそういった類の掲示板で有名なとある廃墟だったそうです。
周りは普通の住宅街ですが、その中にぽつんとある異質な廃墟なんだそうで、
彼女は彼氏と共にそこへ肝試しに訪れたそうです。
まだ少し空が明るい時間帯だったそうですが、周りには人影がなく、
そこだけが静まったかのように感じるような、そんな場所だったとのことです。
その廃墟には玄関から入ることはできませんが、庭に面した窓は開いているとインターネットに書いてあったそうで、
実際に彼女とその彼氏はそこから廃墟へ入ったそうです。

中はぼろぼろといわゆる和風な普通の家、といった感じで、
生々しい食器や座布団の残骸が散らかっていたそうで、落書きなども散見されたのだとか。
廃墟はそういうことが多いらしく、彼女と彼氏はその家の階段に座って自販機で買ったコーヒーを飲みながら、少し話をしたそうです。
時計を見ると夕方の6時になり、辺りは暗くなって、そろそろ帰ろうかと思った時。
金属の何かが倒れ転がるような音が二階からしたそうです。
2人は一瞬驚きましたが、何かが落ちたんだろうと特に気にすることなく、
彼女は空になった缶コーヒーを手にしようとしたそうです。
しかし、掴むどころか手に当たってしまい、それが倒れて床を転がりました。
その時、二階からどん、と足音の様な声が聞こえ、二人は驚き、そして思わず大きな足音を立てました。
そこで、彼女と彼氏は顔を見合わせたそうです。
先ほどから、二階から聞こえる音は、二人が現在出した音と似ている、むしろ同じなのではないか、と。
しかし、二人は事前にインターネットでその廃墟の事はしっていました。
幽霊が出るとかそういう触れ込みだったので、未来の音が二階から聞こえる、などという話は見なかったらしいです。
二階から、震えたような女性のような高いくぐもった声が聞こえたそうです。
しかし、何を言っているのかわからず、彼女は「誰かいるんですか~?」と二階に向かって尋ねたらしいです。
すると、彼氏が言ったそうです。
「今の二階の声、お前のじゃね?」と。

その瞬間に二人とも一気に血の気が引いたらしく、
さらに二階からどたどたと荒々しい足音が聞こえ、二人は走ってその廃墟から出たそうです。
2人はすぐに車に乗って、フォミレスまで逃げ、そこで人がいることに安心感を憶えたといいます。
おそらく、どたどたという足音も二人が逃げる未来の音だったのではないでしょうか。
最後に彼女は「いやぁ、やっぱ廃墟は最高よ」と言っていました。
ある意味、一番恐ろしいのは彼女の精神力ではないだろうか、と思った次第です。

あまり怖くなかったかもしれませんが、その廃墟は現在でも存在してます。
そして彼女は現在もホラースポット巡りを楽しんでいます。

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