私が高校から田舎の大学に進学して、新居に住み始めて一週間経った時の話です。
慣れない新生活の中、一週間過ごして溜まったゴミを捨てようと夜中の23時にゴミ捨て場に向かいました。
当時私の住んでいた地域のゴミ捨て場は小学校にあるウサギを飼う小屋のような造りをしており、ゴミ回収の朝までに小屋の中にゴミをだすというシステムでした。
ゴミ捨て場からアパートまではそこそこの距離があり暗い夜道を一人で歩きました。
もうそろそろでゴミ捨て場に到着するところで妙なうなり声のようなものが鳴っていることに気が付きました。
「ヴヴゥウゥウヴゥウゥウ・・・」
そのうなり声は大きくどうやらゴミ捨て場の近くから発せられているようでした。
幼いころから霊感がある体質で『あ、これは幽霊の類だ』と感じ取りました。
幽霊が見えてしまった時に見えたという反応や、こちらから話しかけるというようなことをしなければ悪さをされたことがなかった経験と、この道をゴミ袋を持ってアパートまで引き返すのも面倒ということもあり、そのままゴミ捨て場に向かいました。
真っ暗なゴミ捨て場まで着くと唸り声はより大きなものとなり流石に怖いという恐怖心がでてきて若干後悔しました。
携帯のライトでゴミ捨て場内を照らすと人影があり
『やっぱり何か居る』
その人影はゴミ小屋の中でゴミ袋を漁っていました。
するとその人影が私に気が付いたのか唸り声のようなものが鳴り止みました。
『ワン‼』と犬が威嚇するような声が聞こえました。
私は犬の散歩に来ていた人がゴミもついでに持ってきて、先ほどの唸り声のようなものは犬だったのかと思い、ライトを照らすのをやめて「こんばんは」と声を掛けました。
『ワン‼ヴヴゥウゥウヴゥウゥウ!!(犬が激怒した様な声』
とともに暗闇から顔が犬の人が四足歩行でゴミ小屋から出てきました。
『は・・・?』
成人男性より大きい体格で完全に顔が犬のそいつは私に対して怒りの表情で睨みつけています。
私の頭の中は幽霊なのか?怪物なのか?人がお面でもかぶっていうるのか?と様々なことを考えましたが、その何かが立ち上がろうとしたのでふと我に返り、持っていたゴミ袋をそいつに向かって投げて全速力で家に帰りました。
大きな鳴き声と途中まで追いかけられていることは本能的に分かりましたが、幸いにも途中で声は途絶えて家に着くころには声はしなくなっていました。
その夜は一睡もできず朝が来るのを布団の中で待ちました。
日が暮れた頃には恐怖心も薄れ、むしろ投げ捨ててきたゴミ袋の方が心配になりお昼にゴミ捨て場を見に行きました。
昨日投げすてた位置からかなり離れた場所にゴミ袋からでたゴミが散乱しており、人間の手で器用にゴミ袋の結び目を開けて中の物を漁っていたような形跡がありました。
その日以来ゴミを夜に出しに行くのはやめました。