なるほどねぇ

大学に入学してから半年が経ち一人暮らしをしていた頃のお話です。

私は元々霊感があった体質で日常生活でもよく幽霊の類を見ていました。
本当に気の合う友人には霊感があることを伝えており、幽霊の類の相談を受けることが少なからずありました。

友人「おれ寝てるときとか幽霊見るんだよ、金縛りってやつにも最近よくあうんだよなぁ」
私「寝てるときに幽霊見えるのは寝ぼけて見える可能性の方が大半だからきっと気のせいだよ。
あと金縛りも脳の疲れ的な話で証明されてるから心配することないと思うよ」
友人「そうか、それなら良いだけどな、よくわからんやつが視界の隅でうろうろしててさ、そいつなんかでかいんだよな~」
私「それもよくある事だから大丈夫だって((笑))」

大学の友人からのこういった相談には真摯に受け答えをしていました。
友人と上手く付き合っていくならこういう事には
『へえ、そうんなんだ、すごいね!』みたいな返しがベストなのかもしれませんが、
友人は私の特異体質にも真剣に付き合ってくれたため相談されたことにはきちんとした回答を返していました。

そんな相談をされた夜のことです。
夜中の12時をまわった頃に就寝するためベッドに横たわりました。
すぐ眠りについたのすがパッと目が覚めたときに金縛り状態であることに気が付きました。
リアルタイムで事が起きるな、と思いながら私は友人にも言った通り、
金縛りは脳の疲れが原因なのと今は寝ぼけて幽霊を見えているんだという冷静な判断をして
金縛りが解けるのを心中穏やかに待っていました。
若干頭が動くようになった時、キッチンへと通ずる扉がガラガラと開き
身長が190cmくらいあるボロボロの黒い布切れのような物を巻いた
細身の男が若干背伸びした状態で私のいる寝室に入ってきました。

『なるほどねぇ・・・、なるほどねぇ・・・あぁ~、お前が・・・なるほどねぇ・・・』

その男は穏やかな声で私のほうを見ながら呟いています。
心中穏やかではなくなりました。
「あ、こいつヤバい方のやつだ」
私に向かって喋りかけているそいつをはっきりと視界で捉えたときに思いました。
『なるほどねぇ・・・』
そいつはこっちにむかって歩いてきます。 私はここで完全に目を閉じました。
その間もずっと『なるほどねぇ・・・』と言っているそいつは私の顔の前まで来たのが分かりました。
鼻息が顔に当たりずっと
『なるほどねぇ・・・お前が・・・なるほどねぇ・・・』と顔元で呟いています。
体感的に3,4分はその状態が続きました。

『あちぃなぁ~・・・。この部屋あちぃなぁ~・・・。
おっ・・・扇風機・・・、わりゃ、あちぃから、扇風機つけらぁ~・・・』
10月でしたが扇風機をしまうのが面倒だったためベッドの傍に扇風機を置いたままにしてました。
ボタン付きの延長コードにコンセントは接続したままでした。
カチャ、カチャ
『おいおい、お前、扇風機つかんど・・・。』
延長コードのボタンをoffにしていたため扇風機がつかないようでした。
『あ、これが付いてないからつかねぇのかぁ~・・・、ピッ、おっ、ついた・・・。あちぃから一番強くするでぇ~・・・。』
風量最大の風が私に当たった時、小さく開けた目の隙間から見たのが良くなかったです。
そいつの顔がわたしの目の前にあり私は半ば気絶するように意識を失いました。
目が覚めた時には朝で妙にリアルな夢を見た・・・と思いたかったのですが。
毎晩必ず閉めるはずの開きっぱなしのキッチンへ通ずる扉、
この時期にはつけない風量最大のままの扇風機、ボロボロの布切れのカスがたくさん落ちていました。

大学の授業前に友人に昨晩あったこの体験を話しました。
友人『え、なに!もう似たような経験あったの!やっぱりそうだろ!でもあれだな、
何かされたりするってのはおれはなかったらか、もしかしたら空き巣が家い入ってきたんじゃね(笑)』
幽霊より空き巣が入ってくる方が怖いと思いながら、
この友人の話を否定すると何だかまたあいつが来そうな気がしたので
「そうかもしれないな」と言っておきました。

あいつが言っていた「なるどねぇ・・・」は、
「なるほどね、お前がおれを否定したやつか」的な意味かなと今では思っています。
なぜならあいつは声は穏やかなのに顔はものすごく怒っていましたから。

朗読: りっきぃの夜話
朗読: 榊原夢の牢毒ちゃんねる

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

閉じる