偶然

これはちょっとした偶然が重なった不思議なお話です。

小さい頃、市で行われているキャンプによく参加していました。
知らない学校の子や違う学年の子と一緒になって遊び、寝泊りをするものです。

到着したそのキャンプ場は、道の両脇にテントを張れる広場と2棟のバンガローが交互に連なっている感じの場所でした。
場所によって番号が付けられていて、山へ向かうにつれて番号が大きくなっていました。

今回私達が泊るのはB-6という広場で各自振り分けられたグループでテントを好きな場所に張ることになりました。

広場の大きさは一応どこにいても全体が見渡せる程度の広さだったと思います。
私達はどこにテントを立てようかと相談した結果、山側の広場の隅にある小川の隣に立てることに決めました。
小川といっても大人であれば飛び越えられるような幅で、小川を挟んだ反対側にはバンガローがすぐ近くに建っています。

テントが完成すると、テンションが上がったままテントの中に入ってゴロゴロしました。

その時の時刻はお昼過ぎだったので、周りのにぎわいがあって静かに聞こえる小川の音が気持ちいいねと話をしていたのを
覚えています。

その日のオリエンテーションが終わり、各自テントに入って就寝の時間まで話をすることになりました。
当時小学生で、しかも違う学校の子と一緒となると、やはり話題にあがるのが「学校の七不思議」でした。
そして、一通り七不思議ネタが尽きると、その流れのまま、各自知っている怖い話を話し始めていました。
そんな時テントをボフッボフッと外から叩く音が聞こえてきて、皆で驚きました。
その正体は、なんてことないキャンプのスタッフさんでした。
「ここは、良い話をしてるねえ。良いの持ってるから貸してあげるよ」
そういって小冊子を友達に手渡すとスタッフさんはテントから出ていきました。

手渡されたのは”47都道府県の怖い話・心霊スポット”という感じの題名でした。
一カ所、付箋がしてあるのが気になりましたが、さっそく自分達の出身地の県の怖い話を探して一通り読みました。
同じ県とはいえ、知らない場所の話ばかりでしたので「怖いねー」と言って終わりでした。
「次、何県の話見る?」
「せっかくだし、今いる県のも見てみようよ」
そんなノリでその県のページを探すことにしました。
すると付箋はその県のページの話に貼られていたのでその話を先に読むことにしました。
「あ、キャンプの話っぽいね!だから付箋ついてたのかな」
「今まさにって感じの話だね」
そんな事を言いながら、どんな内容だろうと期待を胸に話を読み始めました。

”キャンプ場に泊まりに来た僕たちは肝試しをすることにしました。
自分たちが泊っている広場から少し離れたバンガローに一人ずつ入り込み、二階に上がり、入り口側つまりは仲間がいる方の
窓を叩いてそこまで行ったことを証明し、戻ってくるものです。
そのバンガローにB-7と書かれていたので「ラッキーセブンだ!きっといいハプニングがあるぞ」などと友達が騒ぎます。
2、3人が何事もなく終えた後、くじでラストに決まった僕の番になりました。
きっと何事もないだろうと思ってバンガローの中に入りましたが、思った以上に埃臭く、どんよりしていました。
軋む階段を上がり奥まで歩き窓を叩くと、何かの視線を強く感じて横の窓に視線を向けました。
すると二階のはずなのに窓の外から青白い顔をした女がこちらを睨んでいるのです。
慌てて逃げるように階段を下りて友達の元に戻ると早く帰ろうと催促しました。
実はベランダでもあったのではないかと自分に言い聞かせてみたものの気になってしまい、
立ち去り際に女がいたであろう窓を振り返ってみて驚愕しました。
ベランダがないのは仕方ないにしても、窓の下には小川が流れていたのです。
(●●県××市▲▲キャンプ場)”

この話を読んだ私たちは、単純に怖いなと思うのと同時に違和感を感じていました。
「いやぁ、……気のせいだよね?」
それぞれの顔を見合わせながら苦笑いを浮かべました。
「キャンプ場なんてどこも似たり寄ったりなんじゃない?」
「そうだよね、あ、確かキャンプのしおりにここの住所書いてあったよね」
「ああ、確かに!」
きっと違うキャンプ場だから見て安心しよう、という明るい空気に変わったのも束の間
「……ここのキャンプ場だ」
しおりを見返した子が、少し震えながらもしおりを私達の中央へ差し出してきました。
「……って、ことはだよね」
誰もその続きを口にはしませんでした。

静かになったテントに、小川の音が嫌に大きく聴こえました。

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