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それ、ぼくの。

私の父親の話です。

今みたいに役職に就く前は、 整備工場で普通に車の整備をしてました。
街の整備工場だと中古車の販売、 ディーラーより安く車検を行う…
そんなイメージがあるかと思いますが、 私の父親の勤務していた工場は 大型トラックの整備がメインでした。
そして、事故車の処理も稀に任される事がありました。
警察の事故処理が終わった後にオーナーの希望によっては車を綺麗にして、お金が無いからまた走らせる… そんなこともしばしばありました。

そんなある日、数ヶ月ぶりに事故車の整備の依頼が来ました。
見慣れてるとはいえ、気持ち悪いのには変わりはなく、 あまり気が進まないまま作業に入りました。
車体を上げて、車の下を見ていると ボンネットの下に血と髪の毛が付いたままになっている事に気付きました。
『げっ、気持ち悪いなあ〜』
そう思いながらスパナを置いて布でそれを拭き取ろうとした時、ふと何かが聞こえました。
目線を右に動かすと、明らかに工場には合わない足の大きさと靴。
『え?』
そう思った瞬間、ものすごい勢いで顔が出てきました。
右側が明らかに欠損している男の子。
その子が表示ひとつ変えずに 『それ、ぼくの。』 その言葉を繰り返しているばかりでした。
父親は叫びたい気持ちを必死に堪えてそのまま作業に戻ったそうです。

そこからずーっとその工場に男の子はいるらしいです。
この前も工場に書類を取りに久しぶりに顔を出しに行ったら、 腰と首がありえない方向に曲がったまま、
ずっと 『それ、ぼくの。』 それだけを繰り返していたらしいです。
「どうしましたか?」
部下に声をかけられて父親はハッとして
「いや…もう何十年も前からあそこにいるよな」
「ああ、そうですね」
その職場ではその男の子を見ている従業員は多数いて有名な話だった。
ただ、特に何か不幸があったとかそういうことは無かったので 気にも止めずにみんな仕事していました。
「でも、今日…」
「え?」
部下が気まずそうに耳打ちしました。
「〇〇さん来た瞬間から、こっちみてますよね。」
「……え?」
父親は体が固まったが必死に首を動かすと、先程まで一点を見つめていた男の子が
父親の方を見てにぃ……と笑って 『それ、ぼくの。』 と言ったそうです。

すぐ古くからの友人がお坊さんを務めている お寺へと行き、除霊をしてもらったそうです。
『それ、ぼくの。』は 髪の毛と血ではなく、父親だったのでしょうか。
除霊していなかったら、父親は今いなかったかもしれません。

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