手料理

久しぶりに会う友人から、食事の誘いを受けた。
私は急いで着替え、友人宅へと急いだ。
久しぶりに会う友人は、いくらか痩せていたがそれでも笑顔で出迎えてくれた。
「やぁ、いらっしゃい。ゆっくりしていってくれよ」
私は挨拶もそこそこに、リビングへと通された。
台所からはとても良い匂いがして、期待が高まった。

少しして、友人は皿に盛られたトマトソースのスパゲティを出してくれた。
さっきの良い匂いはトマトソースだったのかと思いながら、私は一口食べた。
友人の作ったスパゲティはとても美味しく、夢中で平らげてしまった。
友人は満足そうに笑いながら、「おかわりいる?」と聞いてきたので私はお願いした。

友人は茹でたパスタを皿に盛り、真っ赤なトマトソースをかける… その光景を見ていた私は、ある違和感を覚えた。
(トマトソースって、あんなに赤い色してたか…?あれはまるで…)
私はそこまで考えると、トイレに行くフリをして立ち上がり、台所に居る友人の様子を見てみることにした。
台所に立った友人は、こちらに背を向けているため肝心なところは見えない。
しかし上機嫌な様子で鼻歌を歌っている。
「……良かった、俺の血…美味しいって言ってくれた…。嬉しい、嬉しいな…フフ、フフフ…」
私はすぐにトイレに行き、嘔吐した。
その後気分が悪くなったと言って、友人宅を出た。
そいつの家には二度と行っていないし、今はもう関わりを絶っているから、そいつが今どうしているのかも知りたくない。

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