これは私が働く施設に通ってくれているお子さん、Aくんとのお話です。
私は、軽中度の障がいを持った子達が学校終わり通う放課後デイサービスで働いています。
Aくんは元から言語発達に遅れがあり、そして障がいは関係なく、急に一点を見つめる癖がありました。
前に施設があった場所で、急に天井の隅をじーっと見つめることがあったため、興味本位で、 『Aくん、何かいるの ? 』 と聞いてみました。
すると、Aくんは、 『白いへび』 と真顔で答えました。
後からネットで調べてみると、白い蛇には土地によって幸運と不運、どちらの謂れもあったため私は少し怖くなってしまい、それ以上Aくんに追求しないことにしました。
そして、ありがたいことに施設に通われるお子さんの数が増え、一昨年に施設の引っ越しをしました。
最近になってAくんが先生の後方あたりを見ることが度々あったため、それをきっかけに以前のあの出来事を思い出しました。
そこで軽い気持ちでAくんに、 『わたしの後ろに何か見える ? 』 と聞いてみました。
Aくんは、 『おはな』 と答えてくれて、私の後ろには花が見えるのかと嬉しい気持ちになると共に安堵しました。
他の先生にもこんな嬉しい気持ちになってほしいという思いで、 『B先生の後ろには何が見える ? 』 と聞きました。
すると、Aくんは、 『みどりさん』 と急にB先生の後ろを凝視しながら答えました。 私とB先生はぎょっとしたのと同時に戸惑いました。
私は、余計なことを聞いてしまったと後悔し、すぐに別の話題にかえました。
それから一週間後、今度はB先生からAくんに、 『ねぇ、Aくん。やっぱり私の後ろにはみどりさんがいるのかな ? 』 と聞きました。
Bくんは人差し指と中指の2本でB先生の後ろを指し、 『ふたり』 と答えるのでした。
今になって私はAくんが私に言ってくれたことを思い出し、そして考えました。
私の後ろに見えているという『おはな』 もしかすると『おはな』は花ではなく人間の『鼻』のほうかもしれないと。
いえ、これは私の考えすぎかもしれませんね。